第73回情報リテラシー連続セミナー@東北大学を開催しました

 第73回情報リテラシー連続セミナー@東北大学が、オンライン会議システムZoomを使用して開催されました。

 今回は、北海道教育大学大学院の教授、姫野完治先生から「教師の学びとライフヒストリー」と題して講演がありました。姫野先生は、教員養成や現職教員を対象とした教師の学びや教師のあり方、発達を研究テーマとしており、多くの著書も執筆されています。最近では、克明に8人の教師の学びをライフヒストリー法を用いて記録した「教師の学びとライフヒストリー」が出版されています。

 教師が学ぶ存在として捉えられたのは約30年前のことです。それ以来、教師の成長を経験学習の観点から捉えた研究が進んでいます。当初から教師の学びを検討する際には「省察」に焦点が当てられてきました。しかし、姫野先生は省察だけでは教師の成長を十分に捉えることは難しいと指摘しています。

 姫野先生の研究では、教師の学びを「開かれた教師」「閉じられた教師」と表現し、ライフヒストリー研究の手法でその特徴を検討しています。開かれた教師は他者や学びの機会を楽しみ、前向きな姿勢を持っている一方で、閉じられた教師は他者との関わりが難しく、課題意識も狭くなる傾向があります。姫野先生は、研究成果を踏まえ、知識のインプットに注力したカリキュラムや校内研修を超えた、個人の他者や学習組織との関わりが教師の教育観に与える影響を示しています。

 一方で、教師の専門的能力は個人だけで捉えることはできず、コミュニティの中で求められることや、立場によってもその発達の仕方は異なります。講話の終盤では、教師の学びに関する展望について話されました。かつては井戸端会議のような形で行われていた価値観の共有が、教師の年齢構成や働き方の変化により、これまでの形では難しくなっています。姫野先生からは、今後の教師の学びを支える鍵として、「環境構成」の視点と、「観」の可視化・共有化が提案されました。

 環境構成の視点では、教師が学びたくなるような環境を設計することが重要であるとのこと。具体的には、時間の使い方を意識したり、情報共有を促進するための職員室の環境などが紹介されました。
 「観」の可視化・共有化については、年齢構成や経験が異なる教員の集団の中で、授業に対する技や子供を見る視点を互いに知ることができる場や仕組みを設け、それぞれの価値観を共有することが求められると述べられました。

 ご講演後のディスカッションでは、自身の学びを高めたいという立場や、校内の教員の学びの環境を整備したいという立場から、多くの質問や感想が寄せられました。姫野先生は「(教師の学びが)開いている時、閉じている時があると思うが、それぞれ閉じざる得ない時もある。開く・閉じるの変化を自覚して、教師の仕事を楽しんでいくことが大切だ」とおっしゃっていました。さらに、このように学びに開いたり閉じたりするタイミングは個人によって異なることを鑑みれば、校内研修も個人で選択する範囲を広げて行われることも良いかもしれないとのコメントがありました。

 教師の学びは経験年数で語られることが多くありますが、個人の経験に注目し、個人の経験の違いも踏まえた「観」の共有を行う環境づくりが求められると感じました。

 姫野先生、貴重なご講演ありがとうございました。

(メディア教育論ゼミOG・遠藤みなみ)

 

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