私たちの研究室の研究課題は、高度情報社会においてICTが政治・行政の現場にどのように利用されているのかである。とくに、(1)現代の政府はICTをどのように活用しているのか、(2)どのようにして有権者は政治情報を収集・発信しているのか、(3)ICTを行政に活用する際に弊害となる点は何か、の三点に注目している。
現在、政治情報学研究室では、東日本大震災後の被災地の選挙環境についての調査を進めている。通常、公営選挙を行う国では、「資格のある有権者を正確に把握し、公正かつ効率的な選挙環境の下、如何に正確な開票を行えるか」が、重要となる」。ところが、東日本大震災の被災地は、甚大な被害によって、普段通りの選挙管理ができる状況にはなかった。三陸沿岸では、津波被害によって自治体のマンパワーが失われており、福島では、福島原発の事故によって避難している多くの有権者の選挙権の担保が求められていた。選挙管理委員会による選挙キャンペーンの管理は、一般的に「有権者登録」「有権者への情報提供」「投開票」などから構成されており、ICTの活用は投開票に意識が集中しがちである。しかし、被災地の調査の結果、クラウドを活用した有権者情報の管理やインターネットを利用した選挙キャンペーンも大事であることが明らかになった。情報技術の活用に積極的な韓国の事例を参考にしながら、被災者の選挙環境をよりよいものにするという視点で研究を進めているところである。
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