本分野では、「ものが見える」過程を、脳の情報処理の流れに沿って探求することを目的として、主として実験心理学的手法による研究を行っている。研究テーマとしては、1)視覚における注意と意識の問題、2)情動と注意の相互作用、3)その他、街角のポスターを眺めたりマンガを読むといったような、われわれの日常生活でよくみられる事象を題材とした視覚認知に関する研究や、コンピュータの利活用における心理学的諸問題などがある。
1) 自動的な注意と能動的な注意の関係、特に注意を向けることに伴う処理の抑制について干渉課題を用いた実験により検討している。視覚意識の問題に関しては、注意と意識の関係を探求するとともに心理学的研究及び神経脳科学的研究の成果を基に意識の機能について理論的な考察を加えている。
2) 情動を喚起する刺激は、環境への適応にとって意味のある対象である可能性があり、そうした刺激(たとえば、危険な動物)をすばやく察知することができれば、それに対する迅速な対応が可能になる。単純な刺激の属性(たとえば、大きな音)が注意を引くことは、これまでもよく知られていたが、特定の視覚形状のような刺激も、注意を引きつけることが最近の研究から明らかになってきた。このように、我々の分野では、情動と注意の相互作用について、注意以外にもいろいろな高次精神機能について情動との関係を検討している。
3) その他の研究テーマとして、ダイアグラムやポスターデザイン、マンガの読解に関するアイトラッキング研究や、コンピュータの利活用におけるユーザーの心理に関する研究などが挙げられる。
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