東北大学 大学院情報科学研究科

滝沢 寛之 講師が
情報処理学会東北支部野口研究奨励賞を受賞

受賞の感想
 このたび栄誉ある野口研究奨励賞を受賞することができ、大変光栄に思っております。 これもひとえに、学生時代から今日に至るまでに小林広明教授を始めとする多くの先生方、および諸先輩方から頂いた指導ご鞭撻の賜物であります。心より厚く御礼申し上げます。
滝沢寛之講師
滝沢 寛之 講師
研究の概要
 今回の受賞理由となった論文では、描画処理ユニット(GPU)を搭載するPCで構成されるPCクラスタシステムを用いて、大規模データのクラスタリングを実現する手法を提案しています。提案手法では3種類の異なる粒度での階層的並列処理によって、大規模データクラスタリングの処理の大幅な高速化を達成しています。提案手法では、まず分割統治法によってデータクラスタリングの処理を分割し、各PCへと分配します。それぞれのPCでは、CPUとGPUとで処理を分担して並列実行を行います。ここでGPUを利用することによって、従来では利用困難であった細粒度データ並列性に基づく並列処理を実現し、データクラスタリングの処理時間の大半を占める最近傍探索処理を飛躍的に高速化しています。一方、最近傍探索以外の処理はGPUでの効率的な実行が困難であるため、従来どおりCPUで処理しています。CPUとGPUとで適切に役割分担して協調動作させることによって、GPUの高い演算能力による処理時間の大幅な削減と、CPUのプログラ ミングの柔軟性による高度で複雑なアルゴリズムへの対応との両立を可能にしました。

 また、クラスタリングアルゴリズム自体の改良という観点からも研究を進めて おり、参考論文2はその成果の一部です。部分歪み理論に基づく「部分歪みエントロピ」を基準としてクラスタ構成を更新し続けることによって、統計量の動的変化に高速に追従する適応的クラスタリング手法を提案しています。部分歪みエントロピを最大化するようにクラスタを更新し続けることによって、従来手法で必要とされてきた経験的パラメータを用いることなく、統計量の動的変化に高速に追従可能であることを明らかにしました。
 
論文等
[対象論文] Hiroyuki Takizawa and Hiroaki Kobayashi, "Hierarchical Parallel Processing of Large Scale Data Clustering on a PC Cluster with GPU Co-processing," The Journal of Supercomputing, Vol.36, pp. 219-234, 2006.

[参考論文1] Hiroyuki Takizawa and Hiroaki Kobayashi, "Multi-Grain Parallel Processing of Data Clustering on Programmable Graphics Hardware," The 2nd IEEE/ACM/IPSJ International Symposium on Parallel and Distributed Processing and Applications (ISPA'04), Lecture Notes in Computer Science, No.3358, pp. 16-27, 2004.

[参考論文2] Hiroyuki Takizawa, and Hiroaki Kobayashi, "Partial Distortion Entropy Maximization for Online Data Clustering," Neural Networks, Vol.20, No.7, pp.819-831, 2007.
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