東北大学 大学院情報科学研究科



邑本 俊亮 助教授が総長教育賞と全学教育貢献賞を受賞

 このたびは、たいへん栄誉ある賞をいただくことができました。まずは、私が教育活動を行う上で、いろいろな面でサポートしてくださる多くの方々に感謝申し上げたいと思います。教室変更の交渉や教室設備の調節、レポートの回収や送付等でご尽力いただいた事務の方々、授業内外でお手伝いしてくれたティーチング・アシスタントの諸君、そして、何より私の授業に出席してくれた多くの学生諸君に、心から感謝いたします。 邑本助教授
邑本 俊亮 助教授

■授業はコミュニケーション
 私はこれまで非常勤も含め、さまざまなクラスで授業をした経験があります。受講者が二人しかいなかったクラスもあれば、300人を超えるクラスもあります。専門学校での授業もあれば、社会人の方への講習会や一般の方への公開講座もあります。これらの経験からわかったことがあります。それは、同じ授業をしてもクラスによって反応が異なるということです。あるクラスでは真剣に聞いてくれた内容が、別のクラスでは多くの人が寝てしまう。あるクラスでウケた話が、別のクラスではウケない。同じ授業をしたはずなのに、2つのクラスで理解度に差が出る。そんなことが何度もありました。
 「情報は受け手のもの、受け手が理解したとき意味を持つ」これは、私が半年の授業の中で一度は口にする言葉であり、私自身が授業を行う上でもよりどころとしている言葉です。私が言ったことを学生がどのように受け取るか、その受け取った内容こそが私が伝えた情報です。もし彼らが何も受け取ってくれなければ、たとえ私がどんなすばらしい内容を話していたとしても、授業をしなかったのと同じです。
 授業はコミュニケーションです。コミュニケーションは相手にあわせて行わなければなりません。いつ、どこで、どんな学生が受講しているのか。私は、そういったことを考えながら、授業づくりをしていこうと考えています。

授業風景
授業風景の様子
■授業の裏側
 ところで、私は話すことが苦手です。とりわけ、その場その場で気の利いた話をすることができません。しかし幸いなことに、授業というものは、話す内容をあらかじめ考えておくことができます。考えることは好きです。学生の目線に立って考えます。どうしたら面白いか。どうしたら分かりやすいか。どうしたら眠くならないか。90分の授業の構成を考え、材料を収集し、展開のところどころにそれをちりばめていきます。まるで1つの作品を制作するかのように。材料は鮮度が命です。なるべく活きのいいネタを探します。だから、今年しか使えない材料、今が旬のネタが含まれることもあります。こうして作りあげた作品を、自らが演じます。ただし、アドリブはあまり得意ではありません。元来、話が苦手なのです。こうして1回の授業が終わります。もちろん、成功することもあれば失敗に終わることもあります。失敗は次へのステップです。
 半年の授業が終わると、学生の成績評価をしなければならない時期がやってきます。実は、これがもっともつらい時期なのです。第一に、仕事量が尋常ではありません。私の授業では、受講者が多いにもかかわらず、半年で彼らに提出させる課題・レポート類がとても多いのです。授業内容について学生自身が能動的に考えるということはとても大切なことですし、私としても、学生の成績を判定する際に、1回の試験だけというよりは、なるべく多くの提出物でトータルに見てあげたいという気持ちがあるためです。第二に、評定を決めるときの葛藤です。受講者が多いと評定間のボーダー上に何人もが僅差で並ぶことになります。1点しか差のない受講生たちを振り分けなければならないのです。とりわけ、合格と不合格の振り分けには心が痛みます。しかし、心を鬼にしてでもやらねばなりません。

■学生の声に励まされて
 成績の提出も終わってしばらくすると、学生たちによる授業評価の結果が返ってきます。学生たちが良い評価をしてくれていると、やはりうれしいです。とくに自由記述欄に、気持ちのこもったコメントが書かれていると、この上ない喜びを感じます。このときほど、授業をがんばってよかったと思える瞬間はありません。心が癒され、来年度もまたがんばろうという意欲が沸いてきます。
 今後もこのような学生たちの声に励まされながら、いただいた賞に恥じないよう、教育活動に、そして研究活動にも、いっそう精進していきたいと思っております。

受賞理由:
本研究科人間社会情報科学専攻の邑本俊亮助教授は、優れた授業実践ならびに授業の改善・工夫を
されたことにより、平成17年度の「総長教育賞」を受賞されました。
全学教育基幹科目「言語表現論」で、学生による授業評価が突出して高く、全学教育の模範となる
講義をされたことにより、「全学教育貢献賞」も同時に受賞されました。
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