われわれは,コンピュータビジョンを研究している.人が持つ高度な視覚情報処理能力をコンピュータで実現することを究極の目標に,画像から撮影対象に関する様々な情報―3次元形状や材質などの物理情報から,物体が何であるか(カテゴリー認識)・情景で何が起きているかといった意味情報まで―を取り出す逆問題を研究している.画像計測から人工知能まで幅広い問題を扱い,基礎研究・応用研究の両方を実施している.基礎研究では,対象物の形状やその時間変化を画像群から高精度にモデリングする方法や,画像認識・計測のための確率論的グラフィカルモデルやディープニューラルネットワークの研究を行なっている.応用研究では,物体表面の質感―光沢感やざらつきなどの視覚的質感―を人の知覚と同じように画像から認識する方法や,色々な方法で撮影された画像群―例えば誰かが撮影したスナップ写真の集合―を使って,市街地の空間形状の時間変化を自動的に推定する方法を研究している.この研究は,東日本大震災が直接の動機となっていて,被災を受けた市街地の長期に渡る復興の過程を可視化することを目指している.そのため,屋根にカメラを搭載した専用車両を走らせて,同被災地の復興過程を定期的に記録し続けている.
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