いわゆる伝統的な経済学は1点経済としてモデル化しうる均質な経済を想定するが,現実の経済では空間的異質性を無視できない。また、近年の経済のグローバル化の結果,1国経済は他国経済と不可分に結びついており,複数国を同時に考慮する枠組みが必要になる。少子高齢化,過密・過疎といった今日的な問題の解決にも,空間的不均質性の視点を欠くことはできない。本研究室では複数地域(または連続空間)の考慮が重要であるような問題に,理論・実証の両面からアプローチする。たとえば,
1) 都市経済モデルの都市問題への応用:人口減少下における供給施設の統廃合に伴うサービス水準の維持可能性,及び処理施設の複数自治体による設置と費用負担のあり方と社会的厚生,
2) 空間的人口構成の長期分析:国勢調査の小地域データに基づく多地域コホート分析により,大都市圏の空間的人口構成の時間的変化を分析,
3) 土地利用分析とランダム付け値:ランダム効用との関係の明確化と,ランダム付け値のマクロ的適用における異分散性の考慮,
4) 空間応用一般均衡(SCGE)モデル:輸送費と整合的な空間価格均衡の表現方法に加えて,貿易を通じた付加価値帰属の評価方法についても検討,
5) 空間データの扱いに関する計量経済学的研究:空間自己相関モデルにおける近接行列の役割の検討と,時空間自己相関モデルに関する検定統計量を含む理論開発。
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