東北大学 大学院情報科学研究科

第4回「研究科長賞」受賞

山下博さん
(システム情報科学専攻 博士課程前期2年の課程)
修士学位論文題目 :
サイレント超音速旅客機実現へ向けた二枚翼型の
衝撃波干渉解析


山下さん
山下 博 さん

受賞の感想


 研究科長賞を受賞させていただくことになり、とても嬉しく思います。この賞は私一人のものでなく、
サイレント超音速旅客機実現へ向け、共に研究に励む私達のチームの受賞といえます。よい仲間と
すばらしい先生方に恵まれました。本当にありがとうございます。今後も研究チームの一員として研究
に邁進し、より環境にやさしい未来の飛行機のカタチを考え、それを実現させる新しい技術を日本から
世界へ発信していきたいと思います。

研究内容


− SILENT SUPERSONIC TRANSPORT 環境にやさしい未来の飛行機 −

 飛行機がうまれてようやく100年が経ちました。飛行機は私たちの生活を支える大切な交通手段となり、その役割は今後も大きくなっていきます。安全により速く、快適に。そして環境にやさしく。私たちは飛行機の未来のカタチを考えます。

Breakthrough Concept
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東北大学21世紀COEプログラム「流動ダイナミクス国際研究教育拠点」の楠瀬一洋前招聘教授(現
防衛庁技術研究本部)とその研究グループが、流体科学研究所のスーパーコンピュータを利用して、
超音速(音の速さを超えて)で飛行しても従来のような強い衝撃波を発生しない、二枚の翼を用いる
複葉翼理論を研究しています。

飛行機が超音速で飛行すると、衝撃波と呼ばれる空気が圧縮された波が発生します。例えば、船が
海上を進んだ場合の船首から左右に広がる波をイメージしてみて下さい。この波は次第に整理統合され、
2つの爆音となって地上に到達してしまうため、大きな問題となっています。複葉翼を用いると、その波を
お互いに干渉させて消すことができ、その結果地上で聞こえる音を大幅に軽減できます。

この理論はブーゼマンというドイツの研究者が1930年代に考えた理論ですが、当時は超音速飛行機
もなく、飛行機に使えるとは考えられていませんでした。再びこの理論を使い、超音速飛行へ適用する
ことで、衝撃波による空気抵抗(造波抵抗)が従来型に比べ最大85%カットでき、その結果衝撃波による
騒音が大幅に減少し、かつ燃費も向上することが期待できます。
図
超音速気流中の翼(断面)に生じる衝撃波
(左)一枚翼(ダイアモンド翼) (右)複葉翼の干渉で相殺される衝撃波

Vision for our century
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みんなを安全により速く、快適に世界各地へ運ぶこと。これは未来の飛行機に大切なことです。現在の
飛行機は日本からニューヨークまで約12時間かかりますが、新しい超音速旅客機が実現すればおよそ
半分の時間で到着できます。人・物を世界各地へ素早く移動させることができるようになれば、経済に
与える影響も大きくなります。

飛行機に乗り、長時間同じ体勢でいることでエコノミークラス症候群が心配されています。健康面からも
超音速旅客機は必要です。小さい子供からお年寄りまでみんなが乗れる超音速旅客機を考えています。

超音速旅客機の実現へ向けた新しい技術が待ち望まれています。私たちも複葉翼という新しいアイデア
を使って、未来の飛行機を実現させていきます。

図
サイレント超音速旅客機の飛行予想図
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