東北大学 大学院情報科学研究科

第5回「研究科長賞」受賞


橿渕 健一 さん
(応用情報科学専攻 博士課程前期2年の課程)


受賞の感想


 この度は、研究科長賞という大きな賞を頂き、非常に嬉しく思います。学部3年の終わりに
研究室へ配属されてから早3年、自分なりに研究に励んできたつもりですが、このような賞を
頂けるとは思ってもいませんでした。これも、加藤教授をはじめとする先生方や諸先輩方の
ご指導・ご助言のおかげであり、深く感謝しております。また、いつも自分の家にいるかのご
とく居心地の良い雰囲気を醸し出してくれた研究室の同輩、後輩にも恵まれました。これまで
支えてくれた家族にも感謝しています。本当にありがとうございます。後期課程へ進学するため、
これからも皆様にはお世話になると思いますが、今回の受賞に恥じぬよう、心新たに一層の
努力をしてまいりたいと考えています。

研究内容


 近い将来、モバイルネットワークのさらなる普及とそのブロードバンド化により、いつでも・
どこでも・移動中でも快適なインターネット接続環境を手に入れることが可能になると予想され
ます。そのため、光ファイバやADSL等による一般家庭のインターネット接続環境のブロードバン
ド化がそうであったように、モバイルネットワークの普及・ブロードバンド化は、音楽や動画といった
マルチメディアコンテンツの配信サービスへの需要をさらに高めるものと考えられます。

マルチメディアコンテンツの配信形態は、データファイルを全てダウンロードしてから再生する
方式(ダウンロード型)とダウンロードしながら逐次再生する方式(ストリーミング型)に分類され
ますが、モバイルネットワークにおいてリアルタイムストリーミング配信を行う場合には、ハンド
オーバの発生が大きな問題となります。ハンドオーバとは、ノートパソコンや携帯電話といった
移動端末が接続する基地局を切り替えることであり、ストリーミング型配信ではハンドオーバ中
のデータの欠落により音声や映像が乱れたり、途切れたりします。加えて、無線LANから携帯
電話網へのハンドオーバのように、ハンドオーバ前後で利用可能な帯域幅が変化する場合には、
ハンドオーバ直後に新しいネットワークに適したストリーミングレートへ調節することが困難であり、
ストリーミング品質が低下します。移動先ネットワークにおいて、他のユーザのトラフィックに悪影響
を及ぼす可能性もあります。

本研究では、ハンドオーバの発生を考慮するとともに、低優先度で転送されるパケット(ダミーパ
ケット)を利用してハンドオーバ後におけるユーザの利用可能帯域幅を効率的に推定することで、
移動先ネットワークの状況に応じたストリーミングレートへ調節し、スムーズハンドオーバを実現
する手法を提案しました。本研究の成果は、モバイルネットワークにおけるマルチメディアコンテンの
リアルタイムストリーミング配信の品質向上に寄与するものと考えています。


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