トップページ > 研究活動支援2005年 > 学際的プロジェクト支援報告(森杉壽芳 教授)
■情報の計測と価値

森杉 壽芳・織田澤 利守 |
災害避難における社会的学習と群集行動形成
津波や洪水などの災害時に住民の避難が適切に行われず,逃げ遅れた住民が命を落とすという事例が数多く報告されている.災害時に住民が事前に完備かつ完全な情報を入手することは困難であり,限られた情報しか持ち得ない.本研究では,その際に住民が周辺住民の避難状況を観察した結果に基づき,自らの災害リスク認知の水準を更新するという社会的学習過程を経て,避難のタイミングを決定することに着目する.その上で,住民による意思決定の相互依存的な関係を不完備情報の動学ゲームと捉え,住民の避難タイミングの選択を各住民が合理的(戦略的)な判断を行った結果であるゲームの均衡解として導く.しかし,その状態が社会的に最適な状態と一致するとは限らず,「囚人ジレンマ」のように誰もが避難すべき状況にあるにもかかわらず,誰も避難をしないというパレート劣位な均衡解が実現することが明らかになった.このように,多くの主体が同じようにシステマティックに誤った(全体として最適でない)行動を選択することは群衆行動と呼ばれる. |
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