東北大学
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Q&A

講演のテーマ・内容に関するQ&A

各講演に関してお寄せいただいた質問に講演者が回答しております。
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窪 俊一 准教授
Q.マンガには例えば一コマ、四コマ、制約なし等のスタイルがありますが、先生はどう位置付けていらっしゃいますか?

マンガについて論じる場合には、対象とするマンガとは何かを予め定義しておく必要があります。もしマンガを、「吹き出しがある複数のコマからなり、ストーリーがあるもの」と定義すると、カリカチュアなどの一コママンガは排除されます。日本では、マンガという場合、一コママンガを含めない傾向にあります。そのことにより、ストーリーマンガより以前からある一コママンガの長い伝統が十分に評価されていないと思います。

Q.マンガの内容、形式と国民性は関係ありますか?

マンガ表現における国民性について語る場合は慎重でなければならないと思います。マンガは本来コピーの文化だと思います。明治以来、諸外国の影響も多く受けて発展してきたメディアにおいて国民性を強調することは避けるべきだと考えます。「間」の表現など日本独特だと言われるものもありますが、それが国民性と本当に関係があるのか十分に検討する必要があると思います。

Q.「マンガというメディアを通じたコミュニケーション」ということでしたが、Twitter等のSNSでは「バズった」作品やその感想等を共有してコミュニケーションをとっているような一面もあると思います。感想等のテキスト的交流とファンアートや原典のスクショを含む画像等、視覚的な交流の今後の推移はどのようなものになるのでしょうか?

マンガにはコミックマーケットに代表されるようなファンの交流が昔から行われていて、それがオフラインから、SNS等を通じたオンラインの交流に変わってきています。この傾向は避けがたいと思います。ただし、最近報じられているように、著作権侵害の規制対象にスクリーンショットが含まれるとすると、このファンの自由な交流ができづらくなるのではということが懸念されます。

Q.「マワシヨミジャンプ」についてもっと詳しく知りたいのですが…。

以下のサイトをご覧ください。
https://www.shonenjump.com/app_mawashiyomi/

Q.講演の中で「新しいメディアの登場がマンガの市場を変えていき、社会のコミュニケーションに影響を与えていった」とありましたが、これからの技術の進歩により、また、新たなメディアが登場するでしょう。例えば、VRが思い浮かびます。そのような新しいメディアがさらにマンガのあり方を変え、コミュニケーションに影響を与える可能性はあるのでしょうか?

技術の進歩により、マンガは今後ますますリッチコンテンツ化が進むと思われます。VRやARがその代表例です。紙媒体ではなく、オンラインのマンガが増えることにより、リッチコンテンツ化でマンガが、アニメやゲーム的表現を取り入れる傾向が進むと思います。また、インタラクティブなマンガ表現などにより、読者とのコミュニケーションも変わると思います。

Q.団塊ジュニアの世代です。私が子供の頃に比べ、街の本屋さんが少なくなりました。「人と人とのコミュニケーション」という観点で、今後書店はどのような役割を果たしていくと思われますか?

ネットの書店で本を購入することが増え、近所の本屋さんがどんどんなくなってきています。街の本屋さんを介した読者の直接的コミュニケーションは、ネット上の読者のレビューに代表される間接的コミュニケーションに取って代わられています。それは図書館でも同じだと思います。リアルな書店に行く意味、図書館に行って本を探す意味を考えないといけないと思います。

Q.表現の場が雑誌からオンラインになったことでマンガ表現はどう変わるのでしょうか?短編が増加するのでしょうか?

今はまだオンラインのものも最終的に紙に印刷されることも多いので、コマ割りなどはあまり変わらないと思います。しかし、スクロールして直線的に読むなどの読み方により、次第にスマホの画面が基準になっていくと思います。また、マンガがスキマの時間に読まれることが多いので、ご指摘通り、短編的な表現が増えてくると思います。

Q.1990年代に「面白いマンガが減った」と言われたとのことですが、「面白いマンガ」とその後の面白くない(?)マンガを分ける要因(テーマ?読者への影響力?)は具体的にどんなものが考えられますか?

1990年代半ばに、それまで長く人気だった、例えば「ドラゴンボール」や「スラムダンク」などが終了したことも大きいとは思いますが、その数年後からは「ワンピース」の連載が始まっています。長いシリーズが終わったことによるノスタルジーで言われたこともありますが、同時に、ネットの時代の始まりでもあり、エンターテイメントが多様化したことによるマンガの影響力の減少とも言えます。

Q.マンガが日本発の文化になったことは、日本語、日本社会・・・etcなどで何か説明可能なのでしょうか?例えば、「学習マンガ」は日本独特の現象とのことですが、なぜ日本で始まったのでしょう?

1950年代に日本に限らず世界的にマンガがバッシングを受けました。共通しているのは、マンガの青少年に対する悪い影響に対する批判です。その中で日本では良いマンガと悪いマンガが議論され、教育的に役立つマンガがことさら強調されたように思います。50年代の原爆と原発の平和利用の議論に通じるように感じます。

Q.東北大学として何をできるのかを示唆するイメージはあるのでしょうか?

日本の大学においてマンガで博士論文が書かれるようになったのは2000年代に入ってからです。東北大学でも5名がマンガ/アニメについて博士論文を書いています。そのうち3名は情報科学研究科の学生です。マンガ研究は多分野にまたがる研究とならざるを得ず、共同研究を推し進めることにより、例えば、VRの技術などを使って新しいマンガ表現・読みを可能にすることなどが挙げられると思います。