東北大学
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Q&A

講演のテーマ・内容に関するQ&A

各講演に関してお寄せいただいた質問に講演者が回答しております。
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北形 元 准教授
Q.これだけネット依存が生じている若者が、特に高等学校や大学等のキャリア教育において、いろいろと影響が出ている現状があります。今後、キャリア教育を行う者としてどのようなことをしていけばよいのか、ご教示いただけないでしょうか。

インターネットには様々な情報があり一見多様性が高いように思えますが、情報流通速度が速い分、一部の注目を浴びている事柄に目がいきやすく、皆がそろって同じ方向を向いてしまう傾向があるのではないかと思います。また、自分と同年代でありながら、秀でた才能を発揮している人々の情報を目の当たりにし、自信を喪失しがちな傾向もあるように感じます。しかしながら、ネットで注目されるような事柄は一部の“レアケース”であり、むしろネットでまだ見たことが無いような進路や生き方の方が圧倒的に多く、たくさんの選択肢があるのだということに、若者が気付いてくれるとうれしいと思います。

Q.技術の発展によっては、ひきこもりの増加につながりかねないと講演の中でありました。そのように使い方に関して危惧される技術の一つに例えばVRがあると思います。うまくリアルとサイバーが調和した社会をつくるために、新しい技術について注意すべきことは何だと思いますか?

VRをはじめとする新しい技術は、その使い方がよく検討されないまま技術だけが先行してしまいがちであると感じます。例えば、“歩きスマホ”などはその悪い例の一つだと思います。もちろん、時間が経てば、調和のとれた利用の仕方というものが自然と確立されていくのかもしれませんが、それをただ待つのではなく、新しい技術の開発とともに、その利用の仕方やルールなども併せて検討・提案していくべきだと思います。

Q.インターネットの発達によって、世界の子ども(大人を含む)の間の教育格差が改善されてきていますが、インターネットを使用しての学習は人間の知性を上げるのかそれとも低下させるのか?また、大学(特に米大学MIT・スタンフォード)によるオンライン講義がインターネットを通して受講できますが、直接通う大学はこれからどのような意味を持つのでしょうか。

インターネットを通じてのオンライン学習は、誰でも・いつでも・自分のペースに合わせて学習できるという点において優れており、人間の知性を上げるものであると思います。一方で、仲間や教員との議論を通じ共同で問題を解決する方法を経験・訓練するなど、個人の学習では得難いものが多々あります。そのため、オンライン技術が高度化しつづけても、直接通う大学をはじめ、集団で活動する「現実の場」の意義は今後もあり続けるものと思います。

Q.…やはりそうなると、個人情報も含めたセキュリティをどうするかが問題になりそうですが?

おっしゃる通りだと思います。電子的な情報は漏洩しても気付きにくいという問題や、一旦漏洩するとそれを取り消すことができないという難しさがあります。そこで、個人情報自体をサービス提供者に渡さなくても済むような方式を検討していますが、例えば、水木先生がご講演された秘密計算を用いるという解決法もあるのではないかと思います。

Q.(本日の6講演すべてを聴いての質問・感想になりますが…)AI時代に入って、そのプラットホームとしての情報科学でのコミュニケーションを考えるという点について大変興味があり、勉強することができました。が、個人主観として、どのように社会が進化していっても、最後は人間、人として情動していくことになると思います。人は悩み傷つきそしてそこから成長していくからこそ、人ではないかと考えています。今日のテーマを通じて「予定調和」的な促進につながるようで、役立つことは理解しつつも、何かを双方向にすることがコミュニケーションなので、さびしい気もしています。

ご意見ありがとうございます。私が所属している電気通信研究所の理念の中に、「人間性豊かなコミュニケーション実現のための科学技術を発展、進化させる」というくだりがあります。今回の講演の事前打ち合わせの際に、ある方から人間性豊かなコミュニケーションとはどういうものなのかと問われたことがございましたが、そのとき、簡潔には答えられないことに気付きました。ご指摘のとおり、社会が進化しても最後は人間であるということを忘れずに、今後とも皆様のご意見を頂戴しつつ、教育・研究に取り組んでいきたいと思います。

Q.今から20年程前のインターネット黎明期、2チャンネル等のweb掲示板で同じ趣向(趣味)を持つ者同志がリアル社会で交流する「オフ会」が流行し、私もよく参加していました。情報通信技術(データ解析)などで、機械側(Ai)から人に対して、オフ会のような集団コミュニケーションの提案ができれば素敵だと思いますが、先生はどう思われますか?個人と個人との繋がりや、地域的な共同体の醸成に情報通信技術が活用されることを願っています。

現代では、地域での直接的なつながりが薄くなってきているとも言われており、リアルとサイバーのバランスが、少しサイバー側に傾いてきているようにも感じます。これに対し、機械が能動的に、人と人のリアル社会でのコミュニケーションを促進するというのは、面白いアイデアだと思います。