日本人学生対象

経験者の声

Information

氏名 Name 栗田裕記 Yuki Kurita
学年 Grade 工学研究科修士2年 ECEI M2
指導教員 Supervisor 尾辻泰一 Taiichi Otsuji
留学期間 Stay 平成25年7月1日-8月25日 Jul. 1st-Aug. 25th, 2013
受入先 Destination
7月1日 ~ 8月9日
ライス大学 Rice University
8月10日 ~ 8月24日
ニューヨーク州立大学バッファロー校 University at Buffalo

はじめに

工学研究科 通信工学専攻 尾辻研究室 修士2年の栗田裕記です。私は、本留学プログラム(日本学生支援機構:通称JASSO)を利用して2013年7月1日から8月25日までの約2か月間にわたり、アメリカ合衆国のライス大学とニューヨーク州立大学バッファロー校(以下、ニューヨーク州立大学)の2か所に、私と同研究室の小嶋君の2人で研究滞在させて頂きました。本体験記は、その研究滞在中に経験し感じたことをまとめたものです。

留学のきっかけと留学先の選定について

今回滞在したライス大学の河野研究室・ニューヨーク州立大学のMitin研究室とは、当研究室で中心に取り扱っている炭素原子の単層シート材料「グラフェン」や、電波と光波の中間周波数帯に位置する電磁波「テラヘルツ電磁波」を共通項として、これまで共同研究が続いており、密接な協力関係にありました。特に、河野研究室への研究滞在は2011年度から続いており、その流れで今年度も滞在の機会を提供して頂きました。加えて、今年度はMitin教授からも研究滞在へのお誘いを頂きました。研究内容の相関が強いことに加え、これまでに当研究室の先生や先輩方が築いてくださった信頼関係に基づく安心感がありましたから、両研究室への滞在を希望しました。メールのやり取りを通して調整した結果、ライス大学へは7月1日~8月9日、ニューヨーク州立大学へは8月10日~25日という日程で滞在スケジュールを組みました。

滞在前の準備

滞在前の準備で最も労力を要したのが、ビザ申請手続きです。アメリカへの短期留学にあたっては、交流訪問者ビザ(J1ビザ)を発行してもらう必要があります。下記の書類を用意して東京の米国大使館へ赴き、審査を受けて合格すれば約1週間後に自宅へビザが送付されます。

  • パスポート
  • DS-160
    オンラインで必要事項を入力しますが、入力項目が大変多いので疲れます。
  • 5cm×5cmのカラー写真
    規定さえ満たしていればインスタントでも可能です。
  • ビザ申請料金のATM領収書(オリジナル)
    郵便局のATMを使って160ドルを支払います。
  • 面接予約確認書
    面接日時予約の終了後に表示されるのでプリントアウトします。
  • DS-2019
    極めて重要な書類です。滞在受入先に発行を依頼し、郵送してもらいます。依頼してから手元に届くまで数週間またはそれ以上かかることもあるので、余裕をもって用意することが必要です。本書類はビザ申請時のみならず、アメリカでの入国審査時にも提示する必要があります。
  • I-901 SEVIS費用確認書(支払証明)
    SEVISとは「Student and Exchange Visitor Information System」の略称であり、アメリカ大使館、移民局、学校をネットワークで接続し、留学生がどの学校に通っているかといった情報をデータベース化して必要なときにチェックできるようにしたシステムです。費用は180ドルで、クレジットカードで支払うことができ、支払い後に表示される領収書を必ずプリントアウトします。
  • 財政証明
    滞在に必要な資金を十分に持っていることを証明する書類です。本留学プログラムからの資金援助で不足する分は研究室の研究費から支給されたため、それを証明する書類と、銀行の残高証明書(英文・ドル表示)を用意しました。
  • 成績証明書
    青葉山の工学部教務にて、学部・修士両方の成績証明書を英文で発行してもらいます。発行には2日程度要します。

※ビザ取得までの流れは以下の通りです。

  1. 受入先にDS-2019を作成、送付してもらう。
  2. 上記の各種必要書類を揃える。
  3. オンライン申請フォーム(DS-160)に入力、顔写真の画像データをアップロード。
  4. SEVIS費用の支払い。
  5. ビザ申請料金の支払い。
  6. 面接の日時予約。近い日程は既に埋まっていることが多いので余裕をもって。
  7. 面接(東京)を受ける。
  8. 面接後、およそ1週間以内にビザと提出したパスポートが郵送される。

ヒューストン滞在(ライス大学)

ヒューストンまでの空路は、成田空港からユナイテッド航空の直行便が出ており、約12時間のフライトになります。直行便は経由便に比べて割高であることが多いですが、到着までの所要時間が短いことや、ロストバゲッジのリスクが小さくなるといったメリットがあるので、価格差が小さいときには利用をおすすめします。

成田-ヒューストンはユナイテッド航空の直行便がある。
成田-ヒューストンはユナイテッド航空の直行便がある。

私たちが7月1日から8月9日までの6週間滞在したヒューストンは、アメリカ南部テキサス州の都市です。到着後、空港ターミナルビルの外に出て、まず思ったのは「暑い」ということでした。夏なので当然かもしれませんが、ここでは35℃が平常、時折40℃を超えるというレベルで、日本の夏に比べると相当に厳しいものです。

宿泊先は、大学近く(と言っても3km程離れている)のコンドミニアムタイプのホテルを手配して頂きました。コンドミニアムタイプの部屋にはキッチンがついていますから、近所のスーパーマーケットで購入した食材を使って自炊ができ、食費を抑えられるので非常に好都合です。また、ランドリーもホテルに併設されていますから、洗濯物が溜まった時点ですぐに洗濯ができます。前述の通りヒューストンの夏は非常に暑く、汗を多くかくので非常に助かりました。

以下に、ヒューストンでの6週間の滞在について、各週の滞在の様子を記します。

第1週:

主に、ライス大学滞在にあたり必要となる各種申請及び手続きを行いました。様々な手続きの説明は勿論英語です。2012年秋に1ヶ月半の間フランスに研究滞在した経験や国際学会への参加経験などから、研究関連の英語に関しては多少上達したつもりでいましたが、ここでの事務的な話など、異なるボキャブラリを必要とするような場面では、まだまだ能力・経験値共にまだまだ不足していることを痛感しました。幅広い英語の学習が必要です。この週末は、独立記念日とも相まって4連休となり、実験は第2週から本格的に始めることになりました。

第2週:

まず、私たちが使用させて頂く実験系について、構成や操作手順の説明を受けました。その実験系は、当研究室でも所有している「テラヘルツ時間領域分光(Terahertz Time Domain Spectroscopy; THz-TDS)測定装置」というもので、全く未知の装置ではなかったため、比較的容易に理解することができました。私たちが使用させて頂けるTHz-TDSは2台(1台は河野研の装置、もう1台は河野研の隣にあるMittleman研究室の装置)あり、それぞれ仕様が異なるものです。最初は2人共同で各実験系の操作の練習を行い、翌週以降どのような分担で実験を行なうか相談しました。

第3週:

この週からは担当する実験系を2人で完全に分担し、私は河野研究室の実験系での測定を担当することになりました。週末には研究室ミーティングに参加し、測定試料の詳細と実験の目的・進捗について、拙い英語ながらも議論することができました。このミーティングは、昼食としてピザを食べながら行なうという、斬新なスタイルのものでした。しかし、堅苦しさが無く、ざっくばらんに議論ができる雰囲気は良いものだと感じました。

第4週:

実験の方は、第3週のミーティングで議論した内容をベースにして、改善策を模索しながら測定を継続しました。また、この週は、土曜日に研究活動をする代わりに平日に1日お休みを頂き、ジョンソン宇宙センターへ観光に行ってきました。なぜわざわざ平日にしたのかと言えば、休日は宇宙センター行きのバスが運休になるからです。しかも、宇宙センターはヒューストン中心部からバスで1時間程度の距離にあり、徒歩や自転車で頑張って行くということは不可能です(治安的な面からも)。大抵の人は自動車を持っているので、バスが運休しても困らないかもしれませんが、自動車を持っていない私たちにとっては問題です。アメリカの車社会を実感しました。

第5週:

8月2日には、ライス大学内における研究成果発表会が開催され、聴講してきました。口頭・ポスター発表の両方を通して、多くの学生・教員が議論を交わしている様子を見て、非常に活気を感じました。

第6週目:

ここまで、測定方法について徹底的に問題を洗い出した上で、持参した複数サンプル全てに対して測定を実施しましたが、所望の結果を得ることはできませんでした。しかし、小嶋君が担当していた系では同様のサンプルに対して所望の結果が得られ、非常に喜ばしく思いました。詳細な仕様は異なるものの、基本的には同じである2つの実験系に対して、一方のみが観測に成功した要因については今後の考察が必要です。

私がライス大学での充実した研究滞在を送ることができたのも、熱心なご指導・議論を頂いた河野先生をはじめとして、多くのスタッフ・学生の方々の協力があってのことです。この場を借りて改めて御礼申し上げます。

ライス大学の美しい敷地内。
ライス大学の美しい敷地内。
ライス大学で私が使用させて頂いた実験系。
ライス大学で私が使用させて頂いた実験系。
ジョンソン宇宙センターに展示されているサターンV型ロケット。
ジョンソン宇宙センターに展示されているサターンV型ロケット。

バッファロー滞在(ニューヨーク州立大学バッファロー校)

8月10日、2か所目の滞在先であるバッファローへ移動しました。ヒューストンからは国内線を乗り継いで約5時間(乗り継ぎ時間含む)になります。アメリカの国土の広さをここでも痛感しました。

到着後、Mitin研究室の学生の方に大学の敷地内を案内して頂きましたが、ライス大学はアメリカの大学としてはそれほど広くないという話がここに来てようやく理解できました。私たちは大学の敷地から非常に近いところに滞在したのですが、大学の入口から研究室までは歩くと20分近くかかります(googleマップ参照のこと)。アメリカのスケールの大きさを感じる大学でした。また、宿から最寄りのスーパーマーケットも徒歩で約20分です。宿にランドリーが無かったので、近くに無いのかとフロントスタッフに尋ねました。すると、そのスタッフはチラシをくれたのですが、Webで場所を確認したところ宿からおよそ5kmも離れていました。バスは非常に本数が少なく、洗濯物を抱えてこの距離を徒歩で往復するのも過酷ですから、仕方なく部屋の浴槽を使って洗濯しました。このように、自動車を持っていない私たちにとっては不便さを感じる場面が多々ありました。地域によって差はあると思いますが、アメリカが車社会であることを、身をもって実感しました。

研究滞在に関して、ニューヨーク州立大学の方はライス大学の場合と異なり、当研究室からの過去の滞在実績が無かったため、実験計画を立てるのに必要な情報を一から得る必要がありました。どのような実験装置があってどのような実験ができるのかを、事前にメールでやり取りしながら検討することから始めました。最終的に、ライス大学で取得した実験結果の正当性を補強するための実験を行う、という方針になりました。

実験にあたっては、Mitin先生に懇切なご指導を頂いたことをはじめ、研究室の学生の方が終始お世話をして下さいました。そのおかげで、2週間という短い滞在期間でしたが非常に有意義な時間を過ごすことができました。もちろん、困難な場面が無かったわけではありません。私たちが普段の実験でよく使用するので、関連性の高い研究をしている研究室ならば当然のごとくあるものと思っていた実験器具が無い、といったことがありました。事前のやり取りで、このような細かい部分までしっかりと確認しておくべきでした。

帰国便については、バッファローから成田までの直行便はありませんから、必然的に経由便を利用することになります。今回は、シカゴ経由で帰国しました。シカゴから成田までは約13時間のフライトです。

宿から研究室までは、徒歩で約20分を要する(左下の縮尺に注目)。
宿から研究室までは、徒歩で約20分を要する(左下の縮尺に注目)。
大学の入口は宿の目の前だが、研究室までは長い道のり。
大学の入口は宿の目の前だが、研究室までは長い道のり。
大学構内にハイウェイが貫通している。
大学構内にハイウェイが貫通している。
ニューヨーク州立大学の研究滞在で主に使用させて頂いた実験系。
ニューヨーク州立大学の研究滞在で主に使用させて頂いた実験系。

アメリカの食事情

アメリカ滞在中、研究以外で触れたことの中から一つ、食事情について取り上げたいと思います。写真は、ヒューストン滞在時に近所のスーパーマーケットで購入した冷凍ピザです。その値段約1.5ドル(日本円約150円)です。最安では1ドル程度というものもありました。アメリカのスーパーでは、ピザのみならずジャンクフードの類が内容量に対してかなり安価に販売しています。また、調理する手間もかかりません。

ただ、これが意味するのは、低所得者ほど高カロリーで栄養が偏った、このような食事に依存してしまうということであり、アメリカ人の肥満率が高い要因を垣間見たように感じました。滞在費用を節約したいと思っても、偏った食生活は望ましくありません。帰国後に体重を量ったところ、出発前に比べてほとんど変化はありませんでしたが、栄養バランスに配慮した自炊をしていた結果ではないかと思います。

スーパーで売っていたピザを夕食に。
スーパーで売っていたピザを夕食に。

留学を終えての所感

2012年秋にフランスでの研究滞在を終えたときにも思いましたが、1~2ヶ月ではあっても海外で生活していると、やはり日本は良い国だなということを実感します(ただし、アメリカにはアメリカの良い面が多くあり、どちらが優れているかという話ではありません)。美味しい食事、日本人の細やかな気配り、便利で時間に正確な公共交通機関、夜でも不安なく外出できる治安の良さ、等々・・・。日本の中にずっといると、これらのことを知識としては持っていても、実感はなかなかできないように思います。ですから、どんな人が留学すべきか?と問われれば「研究に関する知見を広げたい人」は勿論のこと「日本が良い国だという実感が持てない人」と答えます。“日本の発展に貢献する”グローバル人材になるためには、日本の良さを感じていることが前提条件になると思うからです。

初めての留学を検討している人の中には、心理的ハードルが高く感じる人もいるかもしれませんが、“しっかり助走をつけて(準備をして)”跳び上がってみてください。超えた先には新しい景色が広がっています。

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