日本人学生対象

経験者の声

Information

氏名 Name 江藤隆紀 Takanori Etou
学年 Grade 工学研究科修士2年 ECEI M2
指導教員 Supervisor 尾辻泰一 Taiichi Otsuji
留学期間 Stay 平成25年7月1日-8月31日 Jul. 1st-Aug. 31th, 2013
受入先 Destination Massachusetts Institute of Technology

始めに

東北大学大学院工学研究科修士2年の江藤隆紀と申します.私は,情報科学研究科の情報技術スキルアッププログラムを利用し,2013年7月1日から8月31日までのおよそ2か月間,アメリカはボストンにあるMassachusetts Institute of Technology(以下MIT)にVisiting Studentとして留学させていただきました.今回は,その体験を,私の感想を交えながらご紹介させていただきます.

留学のきっかけ

今回の留学のきっかけは,私の指導教員である尾辻泰一教授のご助言によるものでした.研究室内で留学の話が持ち上がるまで,本プログラムの存在すら知りませんでした.元々,海外志向は有しており,就職の内定先も海外赴任があるところでしたので,英語力の向上や海外での耐性をつけるためにも,この機会を逃す訳にはいかないと,留学を決意しました.また,学校を通してのオフィシャルでかつ自身の研究の利益になる留学ということで,目的が明確でありモチベーションの維持が容易で,費用の面も補助をしていただけるということも,留学への決意を後押ししたと考えております.

留学の準備

留学先の選定

MITへの留学に際する手続きは少々複雑で,大抵の手続きはiMITというWebページを介して行われます.iMITを通じて重要になることは,DS-2019の取得です.こちらのプロセスに関して下記に詳細を示していきます.

iMITの利用にはまず,MITのID(メールアドレスと同様)が必要であり,その取得の為にMIT identification number(以下,MITナンバー)の取得が必要になります.私の場合,担当教員の所属する部局の事務員から,MITナンバー取得の為に必要な情報を送るようにメールで要請がありました.かかった日数はおよそ2日ほどでした.MITナンバーを獲得したら,Athena email accountを取得します.これがMITのIDとなり,iMITのログインにも利用される重要なものになります.

続いてiMITでの手続きに移ります.iMITにログインすると,様々な項目がありますが,Visiting Student Services内にあるJ-1 Application for New Visiting Studentを選択します.J-1とはビザの名前であり,これがなければ本プログラムを通してアメリカに入国できません.こちらでパスポートやプログラムに関する詳細を,説明に沿って記述していきます.ここで,様々な書類が必要になるので以下に書きだします.

  • 有効なパスポート
  • 成績証明,修了見込証明,在学証明(英語表記,複写でもOK)
  • Proof of Invitation to MIT (滞在研究室からの受入証明書)
  • Financial Proof(留学資金の証明)

2番目の証明書関連は,Webでのアップロードになるため,証明書の自動発行機を用いて紙で出力したのち,スキャンしなければならず,複写無効の印字が浮かび上がってしまいますが,特に問題ではないとのことです.3番目の受入証明書は,担当の事務員の方からいただくことができましたが,こちらから催促する必要がありました.催促すればすぐにもらえるはずです.4番目の資金証明に関しては,十分な額面を揃えた(夏季で$5830以上)ものを提示する必要がありました.個人の資金で渡航する場合は,銀行にて英語の残高証明書をもらい,それをアップロードすればOKです.

一通りの入力が終わると,DS-2019が送られてきます.手続きに非常に時間がかかるので,早めの入力が必要になります.私の場合は,上記書類が送られてきたのがビザ取得の為の大使館面接の後で,非常に焦ったことを記憶しています.

本来であれば,DS-2019を始めとした必要書類を携えて東京にあるアメリカ大使館に面接を受けに行きます.もしDS-2019などの必要書類が揃っていなくとも,後にレターパックで送付すれば問題ありませんが,手続きが遅れてしまうのでなるべく早めの手続きを心掛けた方が良いです.大使館での面接は,銀行の窓口のような形で目的や期間等の簡単な質問に答えるだけです.また,平日でも非常に混雑するので,朝一で面接を予約して30分前くらいには並んでおくとスムーズです.私は8時15分からの予約で7時半には着きましたが,その時点で20人弱は並んでいました.所要時間は,不備や待ち時間等があまりなければ1時間ほどで終わります.

留学

留学中の研究

チューターとしてPh.Dの学生がついてくれました.別な大学を卒業後に,MITに所属して3年目となる中国人の方で,非常に親身になって研究についての説明等をしてくれました.

元々,東北大ではグラフェンチャネル電界効果トランジスタをベースとしたデバイスの応用に関する研究を行っておりましたが,MITでもほとんど同じくグラフェンFETのプロセス技術に関する研究を行いました.具体的には,高周波応用を志向した,高速動作の為のデバイスであり,ゲートとその周囲に存在するアクセス領域に関してパラメータを振り,デバイスの特性をみていくといったものでした.更に,MITではTomasグループのほかに,Jing Kongグループや,Pabloグループ等があり,両グループ共にグラフェンを始めとした2次元材料をベースとした研究を行っており,非常に密接に関わりながら研究を行っている様子がみられました.グラフェン以外の2次元材料は,グラフェン同様に六員環構造を成したhexagonal Boron Nitride (hBN)や,MoS2等を扱っていました.特に,hBNは,結晶構造がグラフェンに似通っていることから,親和性の高さが期待され,グラフェンをサンドイッチするように挟み込むことで,互いの相互作用を限りなく減らし,グラフェン本来の移動度の高さの発現が期待されます.このhBNの合成や,これを実際にFETの絶縁膜に用いたデバイスの作製に関しても行っており,私にとって新しい技術を目の当たりにすることができました.

研究の行い方に関しては,短期滞在のためにクリーンルーム入室の許可がおりず,自らサンプルを作製することはできませんでした.そのため,チューターの作製したサンプルをチューターと共に測定し,その結果に関して一緒に考察をしていました.チューターがデバイスを作製している際は,一人で測定をしたり,別な研究室でサンプル作製の下準備を行ったり,得られたデータに関してMATLABを利用してグラフ化するなどしていました.MATLABは,MITのアカウントがあれば無料で利用することができました.

新規性の高いグラフェンを用いた研究なので,MITでもそれほど大きくは進展しておらず,手探りで様々なことを行っているといった状態に思えました.ですから,チューターとお互いの研究室のプロセスやテクニックに関して議論を交えて,もっとこうした方がいいのではないか,こちらではそれを改善するためにはこうした方法があるのか,ということを常に話していました.お互いに大きな結果はまだ出ておらず,論文等に関してもまだの状況ですが,今後も密にメール等で連絡をとりながら共に進んでいければと思っています.

留学中の研究

留学中の生活

留学中は,日本人が経営するB&Bに宿泊していました.ボストンのアパートの賃料は,日本と比較しても非常に高く,短期での賃貸は行っていないところばかりであったこと,また英語が若干不安で時間も十分に余裕がなかったため,上記のB&Bに決めました.ここは,MITからは少し離れていますが,地下鉄のRed lineを利用すれば徒歩も含めて45分程度(順調に運行した場合)でアクセスできます.朝食は和食を提供してもらえ,キッチンも炊飯器も完備されていることから,晩御飯はほとんどが自炊でした.また,日曜日の昼には日本食を置いているスーパーにも連れて行ってもらえることから,和食が恋しくなることは全くありませんでした.

8月の上旬には,土日を利用してニューヨークへ観光に行きました.移動はバスで,往復で$46でした.観光シーズンだったため,非常に多くの観光客がいました.あまりに多いからと,少し空いた道を通ると観光客をカモにした怖い方がいるので通らないよう注意するか,路上で話しかけられても基本的に無視をした方が賢明です.ニューヨークでも,日本人が経営する短期アパートに1泊しました.$100程度でマンハッタンの中心に宿泊できるので非常に有意義でした.

8月中旬には,バッファロー大学に滞在している同研究室の友人に会いに行きました.バッファロー大の近郊にはナイアガラの滝があるため観光をしました.移動はボストンから飛行機を利用しましたが,往復$300程度で済みました.MITのInternational Student Officeで事前にDS2019にサインをもらっておけば,カナダ側とを行き来することができ,アメリカに再入国の際も公的書類を所有していることから,比較的容易に入りなおすことが出来ました.ナイアガラの滝は,日本の滝とのスケールの違いに終始驚かされました.日本からの観光客も多く,ニューヨークと同様にとにかく観光客だらけでしたが,そんなことも忘れさせてくれるくらいの圧倒的な迫力でした.

ニューヨークもバッファローも,土日の二日間だけでは到底回りきれないくらい沢山の観光スポットがありました.ですから,もし訪れる際には十分な計画と余裕をもって行かれると良いと思います.

留学中の生活

その他

連絡手段

MIT内は無線が飛んでいるため,日本で使っていたiPhoneやラップトップを利用していましたが,その他の場所ではプリペイド式の携帯電話を利用しました.Best Buyというアメリカでは有名な家電量販店にて$15程度で購入でき,ネットで簡単にチャージができるのでおすすめです.

連絡手段

お金

キャッシュで$1000と,クレジットカード1枚(上限20万円),それとトラベラーズチェックを$3500(家賃用)で2か月間は問題なく生活できました.カードをあまり使いたくなかったので,新生銀行からキャッシュで引き出す予定でしたが,口座からの引き出しがストップしていたのでやむなくカードを使うことになりましたので,もし,あちらで口座から引き出す際には早めの確認をおすすめします.

食事

基本的に自炊でした.外食は,少し良いところだと日本より高い上にチップも必要になるので,料理に関してある程度の覚えを持ってから行った方が良いと思います.宿泊先から徒歩10分くらいの近場にスーパーがあり,そこで基本的に買い物をしていました.牛乳や水,ジュースなどは小さくて1 Lサイズ,大きいと1 ガロンのものがあり,もちろん後者の方がお得なのでよく購入していました.野菜は,日本と比較してそれほど大きな値段や味に違いはありませんでした.肉はやはり安いですが,薄くスライスされたものが全くありませんので,和食を作る際には少し手間がいります.お米は,錦と呼ばれるカリフォルニア米が有名らしく,無洗米であるため私も利用していました.味は炊き立てであれば日本のお米とそん色はなく,値段もお手頃だと思います.

食事
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