日本人学生対象

経験者の声

Information

氏名 Name 遠藤和樹 Kazuki Endo
学年 Grade 情報科学研究科修士2年 GSIS M2
指導教員 Supervisor 徳山豪 Takeshi Tokuyama
留学期間 Stay 平成25年10月4日-11月3日 Oct. 4th-Nov. 3rd, 2013
受入先 Destination Karlsruhe Institute of Technology

Photos

カールスルーエ宮殿
カールスルーエ宮殿
ハイデルベルグ城から見た街並み
ハイデルベルグ城から見た街並み
ハイデルベルグ城のワイン大樽
ハイデルベルグ城のワイン大樽
カールスルーエ宮殿から見下ろした景色
カールスルーエ宮殿から見下ろした景色

はじめに

この体験記では、2013年9月からの約1ヶ月間、ドイツのカールスルーエ工科大学(以下KIT)に交換留学をした私の経験を振り返って述べていきたいと思います。これから留学される方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

きっかけ

今回の留学をするにあたって、そのきっかけとなったことのひとつは、先輩達の留学であったと思います。私の所属する徳山研究室では、留学を経験する学生は少なくありません。留学の体験談などを身近な先輩から直接聞くことで、留学に対しての意識が自然と生まれたのではないかと思います。ですが、そもそも私は留学に対してほとんど興味がなく、今回の留学の話を頂いたときも積極的に参加してみようとは思っていませんでした。その理由としては英語力の問題などがありますが、最も大きな理由として、何のために留学するのかということです。研究は日本にいてもできるし、わざわざ海外に行ってまで行う必要があるのだろうかと思っていたのが本音です。これはまとめにも述べていますが、このように考えている人ほど、留学に行ったときの感動が多いのではないかと思います。

前準備

受け入れ先の決定

今回の交換留学は、JASSOの情報技術スキルアッププログラムの支援のもと行われました。留学の承認後、まず行きたい大学を決めます。KITには、指導教員の徳山豪先生のお知り合いであるDorothea Wagnar先生がいらっしゃるということと、研究分野が同じ理論分野を行っているということで、受け入れ先としてWagnar先生に依頼しました。はじめてメールを送ったのは5月の上旬あたりで、こちらは徳山先生に送っていただきました。その後、同研究室のMartin Nollenburgさんからすぐに返信があり、快く了承していただきました。 ただし、受け入れに関していくつか質問を受けましたが、特に資金面に関して明確に説明する必要があると思いました。今回のプログラムでは奨学金が支給されるため(詳細は次に述べます)、資金的なバックアップはまったく必要ないということをしっかり伝えておくべきです。

奨学金

このプログラムでは、渡航先によりけりですが月毎の生活費を受給できます。私の行ったドイツは月に8万円でした。さらに渡航費用として、所属する情報科学研究科から援助があり、お金に関してはそれほど不自由しませんでした。私の行った2013年9月には、円高ユーロ安のピークがとうに過ぎ去っていましたが、毎日豪遊などしなければ十分な金額です。留学するのにあたって、資金不足が大きな足かせとなることが多いと思うので、留学を比較的気軽に考えることができるのもこのプログラムの大きな特徴だと思います。

宿泊施設

宿泊施設に関して、Martinさんに尋ねたところ、いくつかの施設を教えていただきました。家賃の相場としては、月に €400から €600くらいでしたが、もっと安い施設もあるようでした。施設を決めるにあたっては、家賃と大学までの距離でなんとなく決めましたが、結果的に悪くない選択であったと思います。また、本来は代理店との手続きがあり、いろいろ苦労するところですが、今回は秘書のLilian Beckertさんに手続きをしていただいたため、難なく契約を行うことが出来ました。その後は渡航の約1ヶ月前に銀行で海外送金をするくらいですんなり終わりました。

その他の準備

保険やクレジットカードなど、思いつく限りはいろいろ準備しましたが、正直何が必要なのかよく分からなかったので、私は地球の歩き方を購入し、それに載っている海外旅行の準備を参考にしました。自分では気付きにくい必需品も載っていますし、逆にそれを持っていけば、むこうで苦労することも特にありませんでした。

留学中

研究について

まず、KITの研究室を訪れた初日に、先生や学生に挨拶をした後、自分の研究についてそれぞれ紹介し合いました。彼らの研究はGeometric RoutingやMap Labelingなどの計算機科学の理論に関する研究で、以前から知っているものもいくつかありました。対して、私はGraph Samplingに関する研究を行っていましたが、彼らにはあまり聞き慣れない内容であった様子で、質問を多々受けました。そのあと、今後の予定について話し合いました。私は自分の研究に理論的な見解や意見を欲しかったのですが、学生の一人に私の研究に少し近い研究をしている人がいることが分かったので、とりあえず彼女とディスカッションを行うことが決まりました。日本にいるときは、研究室に似た研究をしている学生がいなかったため、学生と自分の研究について議論を交わすことが今までありませんでした。したがって、学生同士でディスカッションを交わしながら研究するということだけでも、私にとっては新鮮でしたし良い経験になりました。また、私はGraph Samplingを行うために、Random Walkという考え方を用いていました。そこで、Random Walkに精通したHenning Meyerhenkeさんを紹介していただき、彼とのミーティングを行い、理論的な意見を数多くしていただきました。正直なところ、私の英語力の問題から、何度も聞き直したり話すのに詰まったりすることがありましたが、書いて説明していただいたりと非常に親切に対応していただきました。留学をするにあたって、英語は大変重要ではありますが、意外と何とかなったのでとても安心しました。

一週間も経てば研究の方向性が見えたので、主にコーディングを中心に行いました。したがって一人で行う作業が多かったですが、メールのやり取りは引き続き行い、論文を紹介されたり軽い質問をしたりをしながら研究を進めていきました。

留学中には、まとまった結果を得ることができませんでしたが、帰国後も研究に取り組み、修士論文を書き終えることができました。いま振り返ってみれば、むこうで取り組んだことは試行錯誤しつつの研究で大きな進展はありませんでしたが、むこうで紹介されたアイディアを後に研究に活かすことができたので、結果的に良かったのではないでしょうか。

観光

平日は基本的に学校にいましたが週末は完全に自由だったので、いろいろなところへ観光に行くことが出来ました。カールスルーエはドイツの南西あたりに位置しているので、ドイツ国内はもちろん、フランスやスイスなど各国をけっこう気軽に旅行することができます。私はドイツ国内にしぼって観光し、さまざまな都市に行きました。ハイデルベルグはカールスルーエから鉄道で約40分の観光都市で、古風な町並みや古城を観光できるため、ヨーロッパ気分を味わうにはもってこいの都市です。ただし、ドイツは基本的に日曜祝日はお店が閉まっていて、買い物は平日か土曜日しかできないのでその点は注意が必要です。

食事

基本的に外食になると思いますが、私は節約のため平日の夜はなるべく自炊をして安く済ませていました。アパートから徒歩30秒のあたりにスーパーがあり、食料や日用品はそこで買うことが出来ました。主食はパンかパスタか芋という感じで、私は調理しやすいパスタをもっぱら食べていました。また、ドイツはソーセージやビールが有名ですが、ビールはかなり安いです。おそらく水よりも安く買えるのではないでしょうか。500mlの6本パックが€4くらいで、かつ種類も豊富なので、さまざまな種類のビールを楽しむことができました。対してソーセージは、種類は豊富でしたが特別安くもなく感じました。

平日の昼は毎回学食で食べていましたが、個人的にKITの学食がとてもよかったのでここで紹介しようと思います。ドイツでは学食のことをメンサと呼んでいて、このメンサの入口近くに大きなスクリーンがあり、これに今日のメニューが載っています。そしてメニューごとに並ぶ列が異なっています(例えばパスタ食べる人はライン1、豚肉料理食べる人はライン2と言った感じ)。また、支払いはプリペイドカードでしかできず、現金で支払いができないということも面白いと思いました。さらに、学生と先生とでは料理の値段が違っていて、学生は €3~ €5で食事をすることができました(先生は倍くらい払っているみたいでした)。学生にやさしいこのシステムは日本にも早く導入されればいいと思います。

さいごに

約一ヶ月の短い期間の留学でしたが、思い返してみればいい意味で裏切られた一ヶ月であったと感じました。この留学を通して、数多くのことを学びましたが、行ってみないとわからないことが多いなあと感じたのが正直なところです。留学前に立てていた目標はあまり達成されることはなかったですが、逆に、思いもしなかった発見をしたりすることもありました。留学前に明確な目標を立てて、それに向かって歩んでいくことはもちろん大事なことですが、それに詰まったときに違った視点を与えてくれたのが留学であったと感じます。研究は日本でも十分できると考える人もいますし、私も以前はそう思っていました。環境を変えることでそれほど変わるものだろうかと懐疑的でしたが、行ってみないとどんなものかわかりませんし、私にとって非常に新鮮で刺激的な体験ばかりでした。ディスカッションを繰り返し、試行錯誤をしつつも一度は失敗してしまったことが、後々になって使うことになるとはまさか思っても見ませんでしたし、KITに行ったからこその成果であると思います。ですので、まずやってみるという考え方も時にはいいのではないでしょうか。

また、海外で暮らすということには多くの不安が伴うものです。最も心配するのは言語の問題ではないかと思います。これはしばしば言われるように、一週間も経てばそれほどストレスを感じなくなりました。私は一ヶ月という短期間だったため、英語の向上ははっきり言ってまったくなかったとは思いますが、意識の変化には十分な期間であったと思います。

以上のことから、もしこれから留学をするかどうか悩んでいる方がいらっしゃれば、ぜひとも行くべきですし、また、私のような留学に対してネガティブな印象をお持ちの方こそ留学してみることが大事なのではないでしょうか。

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