日本人学生対象

経験者の声

Information

氏名 Name 大野林太郎 Rintaro Ono
学年 Grade 情報科学研究科博士2年 GSIS D2
指導教員 Supervisor 須川敏幸 Toshiyuki Sugawa
留学期間 Stay 平成24年9月9日-22日 Sep. 9th-22th, 2012
受入先 Destination マニトバ大学 University of Manitob

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The Nonsuch - マニトバ博物館
The Nonsuch - マニトバ博物館
マニトバ大学
マニトバ大学
湿地帯(Oak Hammock Marsh) 1
湿地帯(Oak Hammock Marsh) 1
湿地帯(Oak Hammock Marsh) 2
湿地帯(Oak Hammock Marsh) 2
宿舎近辺
宿舎近辺

初めに

JASSO留学生交流支援制度の一環で私は平成24年度にカナダへの短期留学の機会をいただきました。ここでは渡航の手続きや現地での生活に関する情報などをまとめ、留学を検討されている方々、及び留学が決定し多少の不安を覚えている方々の助力になれば、と思っております。

受入先の選定

留学をする前、最初にやらないといけないことは留学先の選定と受入先の先生の承諾を得ることです。どんなに留学する意志があっても、現地で引き受けてくれる大学と時間を割いていただけ先生がいなければ意味がありません。 その際、日々研究に勤しんでいる過程で目にした論文の著者、実際に研究集会等で面識を持った教員や指導教官のお知り合いなどが有力候補です。初めてメールで打診する時、同じ分野で研究していること、以前会ったこと等をアピールできれば先方も受け入れを承諾しやすくなります。いずれにせよ何人か候補を挙げた上で指導教官と相談することをお薦めします。私の場合は上記の条件三つを満たす先生に伺いを立てた際、ほぼ二つ返事で承諾を得ることが可能でした。 なお、受け入れて頂けるかどうか訪ねる時、大まかに留学する予定の時期と期間を伝えておくことも重要です。海外の大学は、日本の大学とは違ったスケジュールを立てていることがあるので、こちらで留学する時間が取れるからと言って行き先の教員方に時間があるとは限りません。先生によっては集会、休暇等で留守にしている可能性もあります。また、奨学金の予算で留学することを強調して、他の経済的支援を必要としないことを述べておくのも良いかもしれません。

留学期間と宿舎

留学期間に関しては基本的に予算内で決める選択と、自腹を切ってでも滞在期間を延長する選択があります。また滞在中、最大の出費は宿泊費となります。 当初、私は学生寮に泊まるつもりでしたが、責任者に伺ったところ既に満員で、半年から一年の待ちリストがある上、入居するタイミングを自由に選べない、と言う返事をいただきました。大学によっては留学生専用の宿舎が存在することもありますが、受け入れが決まったマニトバ大学にそのような施設はありませんでした。次に検討したのがホテルでの宿泊ですが、日本円に換算して一泊1万円以上(朝食無し)と言う値段を見て、こちらも早々に断念しました。 ユースホステルなどを含む様々な宿泊施設を検索した上、最終的には現地の大学の宿舎紹介ページにあった一泊4500円ほどのB&B(Bed & Breakfast)に決定しました。B&Bの利点には格安であることと料金に朝食が含まれていること、アットホームな雰囲気で家主に直接様々な現地の情報を訪ねられる事が上げられます。

渡航

受入先、留学期間と宿舎を決めた次に飛行機の手配と宿舎までの移動手段の確保が必要となります。飛行機は、様々な航空会社の料金を比較して目的地のウィニペグ空港へはアメリカ・ミネアポリス経由のルートを選択しました。そして私の時、後者に関しては親切にも現地の先生が空港まで迎えに来て下さいました。そうでない場合は、飛行機の到着から入国審査などを済ませるために十分な時間を考慮した上で、公共の交通機関の経路と時刻表、運賃等をウェブで調べる必要があります。 なお、日本からカナダに渡航する場合、短期間の滞在であればビザは不要でしたが、一度アメリカ国内に入国する形になったのでESTAの申請が必要となりました。手続きはウェブで手順に従って必要項目に情報を書き込むだけの簡単なもので、短時間で終わりました。いざ忘れた場合、成田空港で係の人に尋ねられ、その場で手続きを行うことも出来るようですが、料金の支払などもあるので早めに処理しておくことをお薦めします。

カナダでの日常生活とマニトバ大学

マニトバ大学があるマニトバ州・ウィニペグはカナダの中央南部に位置する州都でレッド・リバーと言う川が南北に流れています。町の南端にある大学へ行くバスの路線は数多くありましたが、B&Bから近場のバス停が20分ほどのところにあったので、片道30分を歩いて大学に通うことにしました。当時の気温は日本の30度前後と比べ、10度前後とかなり肌寒く、気候の違いを意識させられました。B&Bの家主に話を聞いたところ、冬は氷点下50度近くまで下がる様です。 大学では多少の事務手続きを踏まえた上で研究室とLANのアクセスコードを頂けました。ちょうど学期の初めと言うこともあり、講義やゼミの説明会などにも参加して、日本とは違う環境を体験することが出来ました。ゼミなどでは学生が質問や修正案を含めた意見を述べることが多く、先生方は極まれに補う形でしか発言をされませんでした。 自分の研究に関しても、受け入れて頂いた先生と時間を決めてゼミをした訳ではなく、先生の空き時間を教えて頂き、気が向いた時、必要性を感じた時に研究室を訪れ、疑問点が解消されるまで自由に議論をさせて頂きました。結果、二日に一度は足を運び、それまでとは違った観点から多くの知識を得ることができました。 マニトバ大学に在籍している学生の多くは両親の移民や留学など、実に多様な背景を持ってカナダ、ウィニペグへ越して来ました。また、先生方でも元は国外の出身者が多数いらっしゃいました。その結果、日常的に使われていた英語には様々な訛りが入り交じり、“日本訛り”も特に問題視されませんでした。また、B&Bでも海外から宿泊にいらした人が多く、滞在した数日でジンバブエ、トリニダード、スイスからの滞在者を初めに、英語が一言も出来ないフランス語圏のカナダ人などと出会え、世界の広さを実感することが出来ました。 当然、現地の方々と交流を深めていく内、いくつか文化の違いに遭遇、困惑する機会もありました。例えば、B&Bでは玄関以外は、浴室・トイレを含め扉に錠が一つもありませんでした。基本、信頼で生活が成り立っているため、閉まっているドアは鍵が掛かっているものと同じどころか、立入禁止と同等に見なされることもあるようです。他人と交流したい場合はドアを少しだけ開けておくことが風習である説明を受けました。また、ウィニペグでバスに乗った際、乗車賃をピッタリ出さなければ釣り銭は出されず、初めにかなり高めの授業料を支払う羽目になりました。ただ、回数券はどのコンビニでも販売されているので、習慣を理解すれば対応も難しくありませんでした。 食事はキャンパスでする場合、多種多様の食堂や売店があり、一食平均800円ほどで、チップを含めて大体1000円以下でした。水道水は市販の飲料水よりも検査が厳しいらしく、飲むことに何の支障もありませんでした。ただ、「2ブロック先のショッピングセンター」へ買い物に行く場合、遠目に見えてはいても徒歩で40分掛かったりもしました。

観光

平日は毎日大学に通っていた上、町が広大で中心街に辿り着くのも割と時間を必要としたため、観光は最低限に留まりましたが、参考までに幾つか述べようと思います。 一つは、カナダの自然史とマニトバ州、強いては移民の歴史を紹介しているマニトバ博物館でした。全てを見ようと思えば1日でも足りないほどの施設で、実に丁寧で、分かりやすい構成でした。もう一つは、Oak Hammock Marshと言う、湿地帯を人工的に維持している自然保護地域でした。渡り鳥の季節なると多い時は一日あたり40万羽の様々な鳥類が目撃されるところです。

最後に

留学中の貴重な体験をいくつもする裏で、文化や習慣の違いで困惑し、恥ずかしい思いをしたことは多々ありました。事前に誰かに説明を受けていれば、などと思ったことも一度ではありませんでした。しかし、同時に「文化・習慣が違う」、「別の観点」などと「説明」されたところで、それを体験せず、肌で感じずに果たしてどこまで「理解」できたか疑問に思うところがあります。 留学は点数が出るテストではないので、手探りで知らない文化と対面すること、多少は失敗することを含め、大いに実りあることだと思います。それまでとは違う視点を意識させられ、研究に対する見聞を広げる事にもなります。もし留学を検討されているのであれば機会がある時に是非、海外で違う考察パターン、違う文化背景、違う着眼点の方々と交流してみて下さい。

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