東北大学大学院 情報科学研究科

東北大学大学院情報科学研究科シンポジウム
「情報科学」から「行動の因果」を考える Q&A

講演5マンガの読みの視線行動 に関するQ&A

回答:和田裕一 准教授(人間社会情報科学専攻 人間情報学)

  • 最終目標である性格推定を9割超えるためにはどのくらいのデータを集める必要があるのでしょうか?(20代男性他)
  • いわゆる機械学習によって何らかのデータの推定を行う際には、そこに投入するデータ数ももちろん重要ですが、推定のための変数として投入するデータの質を上げることも非常に重要です。今回のケースでいえば、読み手の性格の違いをよく反映するような視線行動の指標を効率よく組み合わせることで、高い精度の推定が可能になると思われます。必要なデータ数は一概には言えませんが、現段階ではなるべくたくさんのデータを集めて、推定に役立つ視線行動のパラメータを同定しようとしている段階です。
  • マンガの作家や作品の個性も関連してくるのではないでしょうか。どんなマンガを好むかという部分にすでに個性が反映しているのでは?(20代女性他)
  • 今回紹介した知見が別のマンガを読む際にも同様にあてはまるかという点は、結果の一般性を論じる上でも重要ですので、今後きちんと調べていかなくてはならない部分であると思います。具体的には、同じ読み手にタイプの異なる複数のマンガを読んでもらって、そこでの視線行動にどの程度の共通性が認められるかを調べるといった方法が考えられます。
  • いろいろな画像からヒトの平均顔を作ったというのを聞いたことがありますが、視線行動のデータもたくさん集めれば平均的な視線行動(のパタン)みたいなものを作ることが出来るのでしょうか。 (20代男性)
  • 今回の発表ではほとんど触れませんでしたが、視線データの分析方法の1つに、まさにそのようなことを意図した手法があります。自分の視線分布が実験に参加した他の読み手の視線分布(の平均値)とどの程度重なるかを数値化することで、視線行動の類似性を定量的に表現するというものです。
  • すでに読んだことがある作品については結果が変わるように思いますが、それは避けて実験を行っていますか。(20代男性)
  • 実験に際しては、同じ内容のマンガを読んだことがあるかをたずねています。読んだことがあると回答した読み手のデータは分析から除外しています。
  • 読みの視線行動から個人特性を推定することは、どのようなことに応用できるとお考えでしょうか (30代女性他)
  • あくまでも可能性の話ですが、マンガを読むだけで読み手のある種の性格傾向や認知能力が簡便に推定できるようなシステムの開発につながるのではと期待しています。