東北大学大学院 情報科学研究科

東北大学大学院情報科学研究科シンポジウム
「情報科学」から「行動の因果」を考える Q&A

講演4親離れ子離れの数学 に関するQ&A

回答:瀬野裕美 教授(情報基礎科学専攻 情報基礎数理学)

  • 親離れ子離れのタイミングについて、種や、世話をする親の性によって違いがありますか? (20代男性、20代女性)
  • 理論ではそれらによる違いは議論していませんが、行動生態学の研究により、種や、世話をする親の性によって大きく違うことがわかっています。
  • 数理モデルの結果と現象に論理的パラドックスが起こったとき、その意味は? (10代男性)
  • 数理モデルは現実と異なります。科学的に合理性のある数理モデリングによる数理モデルで起こる現象との相違は、その現象の理解のための重要な科学的手がかりとなることも多々あります。
  • ヘルパーのような動物行動も包括適応度で説明できますか?(20代男性)
  • 包括適応度の概念は血縁に基づく近縁度と呼ばれる、同じ遺伝子をもつ確率の指標が必須です。この意味でヘルパー行動を包括適応度で説明できるとはいえませんが、利己的遺伝子の考え方で多くのヘルパー行動が理解されています。
  • 生物の繁殖行動は本当に「繁殖」を意識したものなのでしょうか? (60代男性)
  • 講演では、いかにも「意識している」かのような表現をしばしば使いますが、意識とは無関係です。生物の繁殖行動は、生物ができることをできるようにしているのですが、それがもつ特徴は進化の歴史の中で自然に選択されてきたもの、と生物学では考えます。
  • 親離れ子離れの数理モデルの話は、やはり、ヒトには当てはまらないものなのでしょうか? (20代女性)
  • 生物の本質的な要素を理論的に考察するために、数理モデルで考える理論では、仮定を単純化していますが、ヒトにも当てはめることができるかもしれません。ただ、それは、やはり、生物種の1つとしてヒトが本来もっている性質の部分であり、文化という特別な生態条件をもつ人の行動に当てはめる際には、その関係を吟味する必要はあります。