東北大学 大学院情報科学研究科


第57回情報科学談話会line


日     時: 平成27年1月15日(木) 17時〜19時

場     所: 情報科学研究科棟2階 大講義室

話     題: 教育を情報化するとはどういうことか

話題提供者: 堀田 龍也 教授
         (人間社会情報科学専攻 メディア情報学講座 メディア文化論分野)

概     要: 
     堀田先生のお話は、キーボードでのローマ字入力の難しさについてから始まりました。ローマ字入力はアルファベットの組み合わせで日本語を入力し、IMEが自動的にひらがなに変換します。それが変換キーを押すことで漢字とかなに変換されて、日本語の文章を作成することができるというものです。このローマ字入力を「九九」の学習と比べると、「九九」の場合は、国民のほぼ100%が確実に習得しており、学習後も生涯にわたって使用する場面が数多く存在します。それに対してローマ字入力の場合は、必ずしも国民全体に普及しているわけではなく、日常的にキーボード入力を行わないことも多々あります。そこで、小学校低学年でローマ字入力を学習できるようにするためには、いろいろな工夫が必要となるのですが、その一つが、堀田先生が考案された「キーボー島アドベンチャー」というゲーム形式の学習ソフトです。
    「キーボー島」は、ゲームをクリアすることによって、30級と最終の初段にまで進むようになっていて、その進級の度合を教師が生徒ごとにチェックできます。小学校へ無償提供して10年間継続して活用されており、その効果をみると、毎年6月に利用回数が多いこと、1日では午前中と午後の2回のピークがあること、学年が高くなるにつれて各級での到達度は高くなるが、級の後半になると、学年による差はあまり大きくないこと、つまり低学年でも到達度が高い児童もいること、などが明らかになったということです。
 ところで、教育と情報化とのかかわりという点では、一つには、情報化の恩恵を教育で活かすということがあります。「キーボー島」や今話題のMOOCなどがそれです。もう一つは、情報化社会で必要な能力を教育するという側面で、情報そのものを格付けする力、情報モラルを身につけるということ、広い意味でのメディア・リテラシー、などがあげられます。しかし、情報リテラシー教育は義務教育だけでは不十分で、しかも高校へ進学した後に情報に関する授業を受けていない生徒が多いのが実情です。情報化に対して自己調整能力すなわち自分で自立的に学習する能力が要請されているとのことでした。
    堀田先生のお話では、具体的な授業実践の中から情報リテラシー教育の問題について、その成果や今後の課題を明らかにされました。質疑応答では、タブレットの普及は、インフラ整備が追いついていない現状では、まだこれからの課題であること、キーボード入力の授業での学習経験の有無が、たとえば大学受験に影響しそうなこと、学校教育で情報そのものの是非を見分ける力を身につけさせることは難しいこと、などが話題となりました。恒例の自由な歓談でも、ローマ字入力のさまざまな入力方法、タイプライターとの違い、ケータイやスマホでの入力のあり方、など興味深い話て盛り上がりました。

談話会の様子
談話会の様子

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