第55回情報科学談話会
日 時: 平成26年10月2日(木) 17時〜19時
場 所: 情報科学研究科棟2階 大講義室
話 題: 情報通信を支える1つの数学〜誤り訂正符号という組合せ構造〜
話題提供者: 原田 昌晃 教授
(システム情報科学専攻 システム情報数理学講座 システム情報数理学T分野)
概 要:
原田先生のお話は、ご自身のご専門を誤り訂正符号などの「組合せ構造」に関する数学の研究だと紹介することから始まりました。離散的な現象やシステムの数理モデルを取り扱うのですが、その一例が誤り訂正符号です。誤りのない通信をいかに効率よく行うか、という問題に取り組むこの研究は、情報科学のなかで情報伝達過程における誤りの発生とその訂正を数学として扱うという側面と、逆にこの研究が数学へ貢献するという側面があります。
情報伝達過程では、送信する情報が符号化されて送信ベクトルとして通信されますが、そこで誤りが生じるとベクトルが変わります。受信ベクトルはその誤りを含んでいるわけですが、その復号化の処理によって誤りを訂正し受信する情報とします。こうして送信情報と受診する情報が一致することになります。
誤り訂正符号は、われわれの身近なところで応用されていて、たとえば商品などに付いているバーコードや書籍のISBNなども、その一例です。
さらに専門的な話題として、極値的な重偶自己双対符号の存在問題についての話をされ、原田先生が初めて構成に成功した長さ112の符号の例や有名な未解決問題の紹介が行われました。
原田先生は、今後の研究の方向として、組合せ構造の研究が数学のなかでどのように貢献できるかということ、また情報科学のなかで応用できないかということ、さらに離散的な数理モデルを情報科学へ応用するということも手がけたい、とお話になりました。
質疑応答のなかでは、こうした研究が物理学では量子通信・量子コンピュータの開発で問題になっている、というようなことも話題となりました。原田先生のお話は、高校生への講義の経験も踏まえたわかりやすいもので、終了後の交流でも話が弾みました。
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