日 時: 平成23年7月7日(木) 17時〜 場 所: 情報科学研究科棟2階 大講義室 話 題: 時間変動するデータから変動しない情報を取り出す数学 話題提供者: 三浦 佳二 助教 (応用情報科学専攻 応用生命情報学講座 生命情報システム科学分野) 概 要: 統計的な分析では、通常特定の分布(正規分布)を仮定し、その分布の形を決めるパラメータを推定する方法が行われている。今回の談話会は、特定の分布を仮定しなくても、情報幾何学の「射影」という操作を行うことである統計量をうまく推定できるというお話しであった。具体的な例としては、2つの神経細胞の活動の間にどの程度の相関があるかの推定を試みた研究について紹介された。従来の時系列データの相関には、時間が経つにつれ平均的にデータがドリフト(期待値が時間変動する)していくという非定常性がみられ、そのために定常性を仮定した従来の相関係数の求め方では見せかけの相関が発生し、正しく相関を推定できていない。にもかかわらず、非定常性による影響を、差分をとることで推定していた。今回提案された情報幾何学の意味での「射影」を用いた方法では、ドリフトがどのような形であったとしても、相関係数を正しく推定することができることを証明された。 さらに、今後の展開としては、時系列の相関に限らず、神経細胞の発火頻度や地震に見られる事象の生起頻度の不規則性、あるいは動物での強化学習での選択の傾向の推定など、様々な統計量を、セミパラメトリック化を通して非定常性に影響されない固定パラメータ部分を推定できるような方法を工夫したいとして、お話しを締めくくられた。 内容が専門的であったにも関わらず、参加者は皆熱心にお話しに傾聴していた。講演後には、専門的な観点などからの質問もあり、盛況のうちに終了した。