日 時: 平成22年7月8日(木) 午後5時00分より 場 所: 情報科学研究科棟2階 大講義室 話 題: 言語処理から知に迫る ― ウェブ情報編集の未来像と自然言語処理の新展開 話題提供者: 乾 健太郎 教授 (システム情報科学専攻 知能情報科学講座 情報伝達学分野) 概 要: 今回は、ネット上に散在する情報や知識をコンピュータが自動的に編集する事を可能とするソフトウェア技術の開発や、そうした自動編集に基づく新しいタイプの情報検索システムの構築への取組みがテーマでした。 まず、ブログに書かれた人々の意見や経験の情報を広く集めて共有の知とする「経験マイニング」や、ウェブ上の言明間に潜在する同意・対立・根拠等の隠れた論理的関係を解析し、言論空間を再構成する「言論マップ」という2つの応用例が紹介されました。具体的には、例えば「酢は体に良いか?」という質問に対して、その意を自動的に解し、その賛成意見・反対意見、更にはそれらの根拠を自動的に収集し、ユーザに提供する情報検索システムが既に誕生し、そして成長しているとの事でした。また、情報リテラシーとの関わりにおいて、そうした多角的な情報を抽出すること事の重要性を強調されていました。 後半では、そうしたシステムを構築するには、どの様な手続きが必要となるのかについて解説がありました。係り受け解析や固有名抽出の技術はある程度成熟しており、述語項構造解析や照応省略解析等の解析技術も進歩しているので、より高次の抽象的概念を自動的に獲得していくアルゴリズムの開発が現在的な課題となっているとの事でした。具体的には、単語間の類似や対立を、例えば、文脈類似度や特定の動詞とのくっつき易さ等の尺度によって類別する事により、そうした自動的な抽象概念の獲得が可能になるようです。 講演では分かりやすい例文を多く紹介して頂いたこともあり、分野外の人にも理解しやすいお話で、皆さん興味を持って聞いて下さったようです。終了後の質疑応答でも多くの質問や討議があり、活発な意見交換がなされました。