日 時: 平成21年7月16日(木) 午後5時30分〜午後7時10分 場 所: 情報科学研究科棟2階 大講義室 参 加 者: 約40名 話 題: コンフリクト解消の数理的な手法 話題提供者: 曽 道智 教授 (人間社会情報科学専攻 都市社会経済システム分析分野) 概 要: 今回は,労使間での給与額の裁定方法や,(デコレーションが均一でない)ケーキを不公平感のないように分配する方法を,ゲーム理論などを用いて数理的に解析することがテーマでした. まず,実際にアメリカの大リーグの年俸決定のプロセスで用いられているFinal-Offer Arbitration (FOA, 最終提案仲裁)と呼ばれる方法と,その問題点から話が始まりました.これは,2者(たとえば,大リーガーと球団側)が提示する額に対して,仲裁者が提案する額に近い方を採用するという仲裁方法で,1960年代にStevensによって提案されたものです.曽先生は,この方法では紛争当事者にとって納得のいく解決が必ずしも得られないことなどをゲーム理論を用いて数学的に解き明かし,それを解消するために曽先生が提案された,Amended Final-Offer Arbitration (AFOA)という手順を説明されました.それにより,FOAよりも満足度の高い裁定ができることを,実験経済学的手法を用いて実証したことを,ご自身の体験などを交えながら興味深く話してくださいました. 後半では,チョコレートやフルーツなど色々なデコレーションが乗ったケーキを,様々な価値観を持つ人にいかに不公平感なく分配するか,という問題を取り上げ,有限回の手順で実際にそれが可能であることなどお話し頂きました. 講演は非常に卑近な例を用いてお話し下さったこともあり,分野外の人にも理解がしやすいもので,皆さん興味をもって聴いてくださったようです.終了後の質疑応答も,多くの質問や討議があり,活発に行われました.