東北大学 大学院情報科学研究科


「第33回情報科学談話会」開催のご案内

研究室の学生諸君等、お誘いあわせのうえ、ぜひご出席ください

談話会ポスター(宣伝用に使用してください)(pdf)
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日    時: 平成21年1月15日(木) 午後5:30より
場    所: 情報科学研究科棟2階・大講義室
話題提供者: 須川 敏幸 教授 (情報基礎科学専攻 情報基礎数理学U分野)
話    題: 数列の解析と複素解析学
概    要: 数列は純粋数学においてのみならず,信号列や,ある量の離散時間発展モデルなどとして現れる,応用数学においても非常に基本的な概念の一つである.数列を取り扱うために様々な数学的枠組みが用いられているが,その一つとして母函数(generating function)がある.すなわち,与えられた数列を係数に持つようなベキ級数を考え,それが定める函数がその数列の母函数と呼ばれるものである.数列に対する操作と母函数に対する操作の対応表を用いて,数列に関する問題を函数に関する問題に読み替えて解くことが可能となる.このようなアイデアはフーリエ変換やラプラス変換と共通するものであり,工学においては母函数への変換はしばしば「Z変換」とも呼ばれている.

一方,ベキ級数として定義される函数は解析函数または正則函数と呼ばれるものの一つであり,複素解析学はそれらの函数を研究する学問分野である.正則函数に関しては多くの強力な結果が知られており,それらの知見から数列に関する有用な情報が引き出せる可能性がある.

本講演では,一つの例としてハウスドルフのモーメント問題を取り上げる.ハウスドルフのモーメント問題とは,与えられた実数列が,実数直線内の単位区間$[0,1]$上のある確率測度によるモーメント(すなわち,第 n 項が x^n の積分)として実現されるかどうかを決定するという問題である.この問題自体は1921年のHausdorffの論文において必要十分条件が与えられており,一つの解決をみてはいるが,実際に与えられた数列がその条件を満たすかどうかチェックするのは必ずしも容易ではない.母函数の複素解析学的に調べることにより,この問題にアプローチする方法を概観し,その応用としてRuscheweyh氏,Salinas氏との最近の共同研究の一部を紹介したい.
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