全学教育情報特別講義での学生の発案から産学共同研究へ ―量子アニーリングを活用した人材採用の最適化研究をAQC2026で発表―

東北大学大学院情報科学研究科 大関研究室は、キューアンドエー株式会社との共同研究として、「量子アニーリングを用いたスカウト採用と人材の相補性の最適化」に関する研究を実施し、その成果をAQC2026にて発表しました。

 

本研究の特徴は、採用候補者を個人の能力やスコアだけで評価するのではなく、「現在の組織にどのような人材や特性が不足しているのか」を捉え、それを補完する候補者の組み合わせを最適化するという点にあります。既存社員と採用候補者の特性をアンケートによって定量化し、組織が目指す理想像と現状との差をもとに、既存組織とのマッチ度や相補関係を量子アニーリングによって最適化する手法を検討しました。

具体的には、思考の傾向、コミュニケーション、意思決定、ワークスタイル、モチベーション・人間関係、ストレス・将来観などの項目について社員と学生からデータを取得し、組織の理想像とのギャップが大きい項目を重視する最適化問題として定式化しました。研究では、量子アニーリング(QA)とシミュレーテッド・アニーリング(SA)による比較も行い、組織に不足する特性を補う候補者の選定によって、一部の重点項目で理想像との一致度が改善することを確認しました。

さらに分析から、採用によって比較的補完しやすい組織特性がある一方、採用だけで一律に理想へ近づけることが難しく、入社後のマネジメントや教育、多様性を前提とした組織運営が重要となる特性も存在することが示唆されました。これは、単純に「理想的な人材」を探すのではなく、採用と組織マネジメントを一体として考える必要性を示す結果です。

 
 

本研究の出発点となったのは、東北大学の全学教育情報特別講義「実践的量子ソリューション創出論」(産官学連携・問題解決型講義)です。同講義に参加学生が着想したアイデアをもとに、大関真之教授指導のもと、大関研究室修士2年の吉原拓磨さんを中心として研究を発展させ、キューアンドエー株式会社との共同研究、さらにAQC2026での研究発表へとつながりました。

専門分野や学年の枠を越えて学生のアイデアを研究へ発展させ、企業が抱える実社会の課題と量子技術を結びつけた点も、本研究の大きな特徴です。今後は、採用後の定着・活躍データを用いたモデルの更新や、新規プロジェクトのメンバー選定、部署配置・チームビルディングなどへの応用も期待されます。

「実践的量子ソリューション創出論」からは、本研究以外にも、企業・研究機関等との共同研究や論文発表、学会での研究発表へ発展する取り組みが続いています。今後も、学生自らが社会課題を発見し、量子技術をはじめとする先端情報科学を用いて解決策を構想・検証する実践的な教育研究を推進するとともに、講義を起点とした産官学連携と研究成果の社会還元につなげていきます。

 
研究成果詳細