情報生物学
システム情報科学専攻
情報生物学 B07 Information Biology
研究キーワード脳、ホルモン、機能統合、性差
脳内の情報伝達を修飾するホルモンの働きを知る
脳内を駆け巡る情報の波は、電気的な信号を用いて伝播されます。またニューロンの末端では、電気的な信号がグルタミン酸やγアミノ酪酸等の情報伝達物質に置き換えられ、次のニューロンへと伝えられています。これが基本的な脳内情報伝達のかたちになります。しかし、近年、生体の恒常性維持に関わるホルモンが、脳の機能を修飾することが明らかになり、内分泌物質の働きが見直され始めています。
情報生物学分野では、ストレス応答に関わるコルチコトロピン放出因子や、代謝制御に関わる甲状腺ホルモンの中枢機能への新たな役割に着目しています。これらのホルモンの新規機能を解析するために、特定のニューロンを可視化した動物や、ニューロン選択的に人為的操作を可能にした動物を用いた実験的研究を展開しています。昨年我々は、不快情動の中継核である分界条床核のコルチコトロピン放出因子発現ニューロンに性差の存在を確認しましたが、この成果はニューロン選択的可視化動物を用いずには、成し得ることはできませんでした。ニューロン数の性差は、個体の行動発現にどのような影響をもたらすのでしょうか。この疑問に答えるためにはニューロンを選択的に人為的操作し、一つ一つの神経ネットワークを刺激して確かめる必要があります。本研究室では先端の技術を用いて、分子の動き、組織の変化、そして行動発現を観察し、脳内の情報伝達を修飾するホルモンの働きを研究しています。
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Uchida et al., Biology of Sex Differences (2019) 共焦点レーザー顕微鏡による分界条床核背外側部におけるVenus(緑)とCrf(赤)の蛍光染色像。下段はこれら2つの共存を示す。
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Uchida eta al., Neuroscience Letters (2014) 甲状腺機能不全を示す成長遅延小マウスの大脳皮質におけるパルブアルブミン(PV)陽性ニューロン。成長遅延小マウス(B)ではPVニューロンが減少するが、出生直後から甲状腺ホルモンを投与すると正常マウス(A)と同程度まで回復する(C)。