概要

研究科の概要

東北大学大学院情報科学研究科は全学的協力のもとに1993年、東北大学で最初の独立研究科の一つとして創設された。 本研究科は、情報科学を自然科学系の分野としてだけでなく、人文・社会科学系の分野にもまたがる先端的かつ総合的・学際的な基礎学問として育成・発展させるための独立研究科で、 情報基礎科学専攻、システム情報科学専攻、人間社会情報科学専攻、および応用情報科学専攻の4つの専攻から構成されている。

情報科学の概念と体系

情報科学の概念と体系化は、コンピュータ技術を中心とした情報技術の発展・普及と関連する学問分野の形成から大きな影響を受けているが、 その萌芽は、言語学・数学・哲学・倫理学などの伝統的な学問に見出すことができる。 それゆえに情報科学は自然科学だけではなく人文・社会科学なども包含する学際的・総合科学分野として発展させることが本来の姿であろう。 すなわち、情報科学は、従来の個別科学を統合する共通概念としての「情報」に着目することにより、あらゆる学問分野間の相互作用の中から、 単なる技術・知識を越えた新しい知の地平を切り拓くことを可能にする学問分野として位置づけられる。 情報科学の開拓によって、新時代の規範となる先端的かつ学際的教育研究環境の創出と、新時代を主導する人材を育成することが本研究科の主要な目的である。

研究科の理念

本研究科における研究教育は、研究の現場に学生を引き入れ、教員と学生が共に考え、討論し、知識を広げ、 人格を形成し、社会に貢献するという「研究第一主義」の本学に建学の精神を基本理念としている。 更に、情報科学を総合的・学際的な先端的学問分野として育成・発展させるために、発足時から次の2点を特に標榜している。

  • 教育研究の国際性
  • 開かれた大学院

また、情報科学を自然科学系の1つの分野としてでなく人文・社会科学系の分野にも跨る総合的・学際的学問領域として育成・発展させるという伝統は、 応用情報学研究センターの創設以来、本学に培われてきたものである。この伝統を踏まえ、情報科学をコンピュータ・サイエンスやシステム科学や数理科学などの自然科学の分野だけでなく、 人文・社会科学の分野をも包含する分野として形成・発展させるとともに、これらの分野で得られた成果を社会に還元することを目指している。

情報科学研究科ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー

東北大学大学院情報科学研究科博士課程前期2年の課程

ディプロマ・ポリシー

情報科学研究科では、次に掲げる目標を達成した学生に修士の学位を授与する。

  1. 情報科学を基盤とした文理を横断する広い視野と専門的知識・技能に基づいて、専攻分野において独創的な研究を遂行する能力又は高度に専門的な職業に従事できる能力を有している。
  2. 社会的及び学問的ニーズを踏まえつつ、高い倫理と責任をもって、情報科学の推進を通して社会の発展に貢献することができる。
  3. 国際的視野とコミュニケーション能力を有し、世界に向けて研究成果を発信すること、又は高度に専門的な職業に活かすことができる。

カリキュラム・ポリシー

情報科学研究科では、ディプロマ・ポリシーで示した目標を学生が達成できるよう、以下の方針に基づき教育課程を編成・実施する。

  1. 情報科学を基盤とした文理を横断する広い視野と専攻分野に関する専門的知識・技能の獲得を促すために、共通基盤科目及び 専門科目からなる多彩な履修推 奨コースを提供すると共に、論文作成等に係る研究指導体制を整備する。共通基盤科目は数学群、情報・生命系群、機械・知能系群、土木工学群、言語・メディア群、心理・哲学群、社会科学群の 7 つの群に共通する法律制度、倫理、学際科学、人文科学を情報科学の立場から体系化した4つの科目群から構成され、所属する学生はそのうち2科目(4単位)を修得することを修了要件のひとつとしている。 専門科目は上記7つの群に合わせての数学科目群、情報・生命系科目群、機械・知能系科目群、土木工学科目群、言語・メディア科目群、心理・哲学科目群、社会科学科目群に分類して構成され、その専門性に合わせた専門科目を修得すると共に、さらにインターンシップ研修などの共通展開科目群を履修することで、各学生が学際性・専門性を併せ持つ立場から展開的専門へと踏み込むことができるカリキュラム構成となっている。そして、これら修得した共通基盤科目・専門科目を集約する形で、ゼミナール・研修科目群を段階的に修得することで修士学位論文へと集約される順次性をもつ教育・学習方法として構築されている。
  2. 研究遂行に求められる高い倫理とプロジェクト管理能力を育む機会、及び学内外における幅広い社会的経験の場を提供する。
  3. 学修成果の評価基準を明示するとともに、修士論文又は特定の課題に基づいて研究成果の審査及び試験を適切に行う。修士学位論文の審査及び最終試験は、各群ごとに中間審査・予備審査が必要に応じて設定され、そこで、指導教員、学位論文指導教員および研究科担当教員等により構成される修士学位論文審査委員からの助言を受けながら段階的に加筆修正が行われ、最終試験を兼ねた本審査会へと集約される形で合否判定が行われる。

東北大学大学院情報科学研究科博士課程後期3年の課程

ディプロマ・ポリシー

情報科学研究科では、次に掲げる目標を達成した学生に博士の学位を授与する。

  1. 情報科学を基盤とした文理を横断する豊かな学識と高度の専門的知識・技能に基づいて、専攻分野において自立して独創的な研究を遂行し指導できる能力、又は高度に専門的な職業に従事できる卓越した能力を有している。
  2. 社会的及び学問的ニーズを踏まえつつ、独自の発想や高い倫理と責任をもって、情報科学を推進し、社会及び学問の発展に貢献することができる。
  3. 高度な国際的視野と高いコミュニケーション能力を有し、世界水準の研究成果を発信し、それによって国内外における情報科学分野の研究を先導すること、又は高度に専門的なリーダーとして職域を牽引することができる。

カリキュラム・ポリシー

情報科学研究科では、ディプロマ・ポリシーで示した目標を学生が達成できるよう、以下の方針に基づき教育課程を編成・実施する。

  1. 情報科学を基盤とした文理を横断する豊かな学識と専攻分野に関する高度な専門的知識及び技能の獲得を促すために、論文作成等に係る研究指導体制を整備する。研究指導体制は学生の研究テーマの専門性に合わせて数学群、情報・生命系群、機械・知能系群、土木工学群、言語・メディア群、心理・哲学群、社会科学群の7つの群ごとに構成される。ゼミナール・研修科目群における専門科目「博士ゼミナール」、「博士基盤研修」、「博士専門研修A」、「博士専門研修 B」を段階的に修得する教育過程を経て博士学位論文へと集約される。
  2. 研究遂行に求められる高い倫理観、プロジェクト管理能力、及びリーダーシップを育む機会を提供する。また、国内外で最先端の研究成果について学び協働して研究活動を行う場を提供する。
  3. 学修成果の評価基準を明示するとともに、博士論文に基づいて研究成果の審査及び試験を適切に行う。 博士学位論文の審査及び最終試験は、研究科として企画された年2回開催される「博士後期学生発表会」での講演、「博士論文作成計画書」の提出と、各群ごとに必要に応じて設定された中間審査・予備審査において、指導教員、学位論文指導教員および研究科担当教員等により構成される博士学位論文審査委員からの助言を受けながら段階的に加筆修正が行われ、最終試験を兼ねた本審査会へと集約される形で合否判定が行われる。

研究領域と活動

情報基礎科学専攻は、計算理論、計算機構論、知能集積システム科学等の計算科学、ソフトウエア科学、ファームウエア科学、 アーキテクチャ学などの情報科学の基礎をささえる理論、大規模超高速ネットワークなどのための次世代の計算機科学、さらには、 情報科学の幅広い可能性を探る数学と数理科学や、情報論理学、コミュニケーション論、情報セキュリティ論、超高速情報処理論、 広域情報処理論など、未来に向けての基礎的研究を展開している。

システム情報科学専攻では、システムを対象とした情報数理学、情報の解析、処理、伝達のアルゴリズムとメカニズムに関わる知能情報科学の諸分野、 情報生物学、情報システム評価学、ロボット技術に必須のイメージ解析学や知能制御システム学、音情報科学、情報ストレージシステム科学、 融合流体情報学などの自然科学系の研究を展開している。

人間社会情報科学専攻においては、言語学、心理学、哲学、論理学、政治学、社会学、経済学などの人文・社会科学の視点から「情報」の本質を解明するとともに、 社会システム・都市計画学、交通計画学などのシビル・エンジニアリングとの学際的連携によって人間社会システムに関する多面的情報を総合する研究方法を開拓し、 現代社会が直面している環境、都市、人口、資源、エネルギーなどに関する諸問題の解決を目指している。

応用情報科学専攻においては、情報通信技術・情報ネットワーク・情報通信ソフトウエア・ブレインファンクション集積学などの応用情報技術の諸分野、 人間-ロボット情報学・流動システム情報学・認知情報学・健康情報学・バイオモデリング論などのほか、物理系と生命系のゆらぎに関わる研究分野、 さらには、方法論の基礎的バックボーンを与える複雑系統計科学など、文理の異分野が融合した応用情報科学の進展を目指している。

開かれた大学院研究科とするため、社会人や外国人の積極的な受け入れによる多様な研究教育の推進、学部・研究科を越えた学際的な学内学術シンポジウム・ 国内研究集会・国際シンポジウムの開催、情報科学に関する英文ジャーナルの出版とそのウェブページへの公開、などにより総合的・ 学際的情報科学を積極的に推進している。このような研究教育活動を円滑の推進するための環境整備の一環として、2001年3月には8階建ての新棟が完成した。

研究科の沿革と構成

1993年に設立された情報科学研究科は、情報基礎科学専攻、システム情報科学専攻、人間社会情報科学専攻の3専攻からなり、 これらの専攻の中には、電気通信研究所、大型計算機センター、情報処理教育センター、言語文化部、保健管理センターからの協力講座も含まれ、 全学的な協力体制が組まれた。その後2001年には、言語文化部からの協力講座は基幹講座に組み込まれた。さらに、設立後10年を経過した2003年には、 蓄積された基礎学問の研究実績が評価され、社会貢献の実践部門としての役割を果たすべく、応用情報科学専攻が第4番目の専攻として新設された。 なお、現在の情報科学研究科は、電気通信研究所、情報シナジーセンター、流体科学研究所、東北アジア研究センター、 保健管理センターからの協力講座を含み、基幹の15大講座、42分野、協力の14講座、および統計数理研究所との1連携講座から構成され、 強力な教育・研究体制が敷かれている。

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