研究科長挨拶

情報科学研究科長 加藤 寧

新しい情報科学の構築と展開

情報科学研究科長加藤 寧

2021年に延期された東京2020オリンピック競技大会の聖火リレーが3月25日に福島県からスタートしました。杜の都仙台では3月28日に桜の開花宣言が発表され、いよいよ本格的な春シーズンの到来となりました。ただ新型コロナウィルスについては収束への道筋がまだはっきりと見えず、皆が心待ちしているもう一つの「春」の訪れを感じるにはもう少しの辛抱が必要な状況です。研究科全体で引き続き最大限の感染防止策を講じ、一日も早く皆が安心して教育研究に邁進できる環境が取り戻されること、そして笑顔の満ち溢れる普通の毎日が送れることを心から願っています。

 

東北大学大学院情報科学研究科は1993年に東北大学で最初の独立研究科の一つとして創設されました。文理融合を標榜する本研究科は、情報科学を自然科学系の分野としてだけではなく、人文・社会科学系の分野にもまたがる先端的かつ総合的・学際的な基礎学問として開拓し社会に貢献することを理念とし、情報基礎科学専攻、システム情報科学専攻、人間社会情報科学専攻、および応用情報科学専攻の4つの専攻から構成されています。研究科の発足以来、「研究第一主義」、「実学重視」及び「門戸開放」という本学の建学の精神に則り構成員が一丸となって様々な分野において優れた研究業績を挙げ世界を牽引すると共にこれまで3,680名の修士学位および865名の博士学位を授与し、学術の発展と産業技術の振興を支える卓越な人材を輩出してきました。

 

研究科は近年様々な研究活動を加速させています。以下幾つかをご紹介させて頂きます。2019年に設置された「タフ・サイバーフィジカルAI研究センター」は世界最高の研究実績を生かしSociety5.0の先を見通した取り組みを力強く展開しています。産官学民が一体となって様々な大型プロジェクトを推進していることは大きな特徴です。2020年12月に設置されたラーニングアナリティクス研究センターはニューノーマルを見据えた東北大学ビジョン2030の柱として掲げられているオンライン戦略を推進し、多様な教育プログラムの機動的展開や新しいセンシング及びビッグデータ解析手法の導入、更に全学的な取り組みにより世界トップクラスの学際的なセンターを目指しています。2020年12月に情報基礎科学専攻に設置された量子コンピューティング共同研究講座では産学の力を集結し技術分野を超えた共通課題の抽出と解決を目的に量子関連技術の基礎と応用の深化を目指しています。また、2011年1月に研究科に発足した数学連携教室では、数学の汎用性と抽象性の強みを生かし数理科学を中心とした様々な科学分野間の横断的な連携により基礎研究の応用から新領域の開拓まで異分野融合の取り組みを推進しました。現在その機能が「純粋・応用数学研究センター」に引き継がれています。

 

教育面においては2017年まで続いた文部科学省の成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成(enPiT)プログラムに参画しセキュリティを担当する中核拠点として実践的IT教育「仙台スキーム」を推進しました。その後、このプログラムは学部教育を対象にしたenPiT2に発展し現在技術者の再教育を含むenPiT-Proとして展開されています。その特徴であるPBLの実施は産業界の協力により実現しこれまで多くの修了生を送り出し我が国の情報技術分野の人材育成に大きく貢献してきました。また、2017年に開始されたデータ科学国際共同大学院(GP-DS)では学内の六つの部局を横断し、海外研究教育機関との連携や実践的教育を通じ、学際性、国際性を重視しデータ科学を様々な分野で活用できる世界最高水準の人材育成を行っています。更に今年度に本研究科がハブとして学内の複数の研究科と連携した文部科学省国費外国人留学生の優先配置プログラム「ディジタル・トランスフォーメーションを推進するデータ科学・AI実践人材の育成」が新たにスタートしており、実世界の問題発見や解決能力を持つグローバルに活躍できる人材育成を行っています。組織横断的な動きとして、研究科では高度なAI人材を持続的に育てるために2019年に情報基礎科学専攻にデータ駆動科学・AI教育研究センターの協力講座としてデータ基礎情報学講座を設置し組織間の連携を強めています。

 

コロナ禍の発生から一年以上経ちましたが、感染者数は依然として高止まりしている中、感染防止の観点から研究科では多くの授業が昨年度と同じオンライン形式であり、また学内外の多くの会議もWeb会議となっています。人と人の繋がりの大切さ、対面でしか得られない繊細なコミュニケーションの重要さが思わぬ形で再認識させられました。ワクチンの接種は昨年12月にアメリカで始まり、これから世界規模で徐々に進んでいくものと期待されています。2021年は間違いなく希望を持たせてくれる年であります。これから数年先のことをまだ正確に見通せませんが、およそウィズコロナとアフターコロナという二つのフェーズに分けられることに異論を挟む余地はなさそうです。ウィズコロナ時代を生き抜くために感染防止を第一にリモートでは達成が難しい機微なコミュケーションを如何に実現するかは課題であり、これに対しアフターコロナ時代においてはDXによって対面と非対面というハイブリッド型のコミュニケーションを如何に上手に使い分けニューノーマルを体現するかは課題となるでしょう。本研究科はこれらの課題を多角的に検討し解決手法を導き出す重要な学問分野を擁しており社会から大きな期待が寄せられています。これを千載一遇のチャンスと捉え研究科の教員、学生を含む構成員が一体となり様々な未知や未経験な課題に挑戦し情報化社会の更なる変革に対応できる「新しい情報科学」を世界に発信していく所存です。

 

今後ともご指導ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

令和3年4月1日