第33回 情報リテラシー連続セミナー@東北大学を開催しました

2018.10.30
 第33回情報リテラシー連続セミナー@東北大学が1027日(土)に、上越教育大学教授の中野 博幸先生をお迎えして行われました。今回の題目は、「働き方改革時代の教師のための統計分析入門」です。

 中野先生は、js-STARhttp://www.kisnet.or.jp/nappa/software/star/)という日本で最も使われている統計ソフトの開発者です。中野先生はもともと中学校の数学教師や柏崎市立教育センター指導主事、小学校の教頭などをされていましたが、上越教育大学に現職派遣された際に、その後js-STARを共同開発することになった田中敏先生と会ったことが人生の転機となったそうです。

 中野先生は、学校現場が多忙化している背景として、学校現場が学校評価の意識を強く持ち始めたからではないかと考えていると言います。学校評価のためにPDCAサイクルを回して、改善を図ることをしっかりと行うようになりました。しかしながら、中野先生の調査によると、学校評価で使われている分析方法は、百分率法と平均値法が中心でした。

 そこで、中野先生が大切にしているのは、教師が統計リテラシーを身につける事で働き方改革につなげることができる、という考え方です。例えば学校評価のアンケート結果で、90%以上学校は楽しいと答えた生徒がいても、保護者に1人、自由記述で批判的な意見を述べた人がいたとしたら、たった1人であったとしても学校全体として改善策を出す必要に迫られる、という状況が見られるそうです。

 これに対しては、中野先生は、集団としての成果・課題と個人の意見は分ける必要があると言います。統計学は集団における成果と課題に寄与できるものであり、例えば肯定的な意見が90%だった時に残りの10%について本当にやるべきことを見出すのが統計学の寄与するところと考えている、とお話しされていました。

 また、有意差が出るということの本質的な意味についてもお話しされました。研究活動においては、効果があったかを確認することができれば良いですが、現実の場面では、出てきた結果から判断をしたり、子供達への対応を考える必要があります。そこが研究と実際の指導を区別しないとけない部分であると言います。例えば、保護者アンケートや学力テスで数字が出た時に、点数の差だけ見てしまうと、どこを重点的に対策を行うのかを見失うことにもなりかねず、その結果、現場の働き方の多忙化につながっている可能性もあることを指摘されていました。教師にとっては、統計リテラシーは、やることの取捨選択をする際に、必要なスキルであると言えます。

 さらに、統計の考え方を使う際に注意する点についてもお話しされました。統計の考え方を用いると、学校評価の際に、指導者に評価をしてしまうことになりかねない、ということが懸念として挙げられます。学校現場では評価がはっきり出ることをよしとしない文化があるので、配慮が必要になります。このような状況に対応するためには、統計の利用者として、正確に統計の考え方を理解し、結果から適切な判断ができることが管理職を含め全ての教師に必要であることを指摘されていました。

 セミナーでは、js-STARを使って体験的に統計を学びました。学校現場で実際に判断が必要な場面で用いられるような内容について、実際にサンプルデータを用いて仮説検定を行い、検定の考え方や、パーセントや平均値では違いがあるように見えても、有意差がない内容があることを確認し、これまで業務の中で行ってきていた判断を振り返って考えることができるような時間となりました。参加者からは、業務の中でこれまで行ってきていた数値の評価の仕方が本当に正しかったのかなど、自分自身の業務を振り返るような質問もあり、参加者それぞれの立場で講演内容が深まっていることを感じました。

 中野先生、ありがとうございました

(博士課程後期2年 小田理代)

堀田龍也教授によるプログラムとセミナーの紹介 上越教育大学 中野 博幸先生による講演「働き方改革時代の教師のための統計分析入門」 ワークショップの様子 グループディスカッションの様子