第29回 情報リテラシー連続セミナー@東北大学を開催しました

<2018.4.26> 
 第29回情報リテラシー連続セミナー@東北大学が421日(土)に、学校マネジメントコンサルタントの妹尾 昌俊先生をお迎えして行われました。今回の題目は、「学校の働き方改革の背景と必要な課題設定力」です。

 妹尾先生は文科省学校業務改善アドバイザー、中教審学校の働き方改革部会委員をされています。『「先生が忙しすぎる」をあきらめない』や『変わる学校、変わらない学校』などの著書も持っており、精力的に働き方改革に関わっていらっしゃいます。前職の野村総研では、学校評価者組織マネジメント、地域とともにある学校づくり(コミュニティスクール等)について全国調査などを行われていました。

 セミナーでは先生から挙げられた以下の3つの問いに対して、参加者とともに批判的に考えていきました。
  1. 日本の先生たち(小中高)は、本当に忙しいのか?
  2. 忙しいとしてもそれはマズイことなのか?(改善しないといけない重要な問題なのか?)
  3. 長時間労働を改善するためには、何が真に必要なのか?

1. 日本の先生たち(小中高)は、本当に忙しいのか?
 この問いについては、批判的な観点として、初めに妹尾先生から、教師の忙しさを調査する方法の課題が挙げられました。例えば教師の忙しさに関する調査にはいくつかの種類があります。忙しいと思うかをたずねる調査票や、実際に働いた時間を報告する調査、また自己申告で記録する調査、30分刻みで実施したことをマークする調査などです。しかしながら、それ自体が忙しさを生み出したり、自己申告だと虚偽が出るなど、課題もあることが挙げられました。

 このような課題に対応するためには、タイムカードやICカード等の客観性の高い記録方法を導入することが一つの解となります。もっとも、夜にカードをかざした後で残業することなども可能なので、これらの方法も万能ではありませんが。妹尾先生によると、タイムカード等を導入する理由には、以下の3点があるといいます。
  理由1:労基法や厚労省のガイドラインで必要とされているため。
  理由2:自らの働き方を振り返るため。
  理由3:万が一倒れたときや病気となった時に、公務災害認定(または労災認定)時に必要なため。

 調査方法については批判的な観点を持ちつつも、やはり教員の勤務時間についてのデータからは、日本の先生達が働きすぎているということが示されているということ、そして現状をきちんと把握することが重要であるとのお話がありました。

2. 忙しいとしてもそれはマズイことなのか?(改善しないといけない重要な問題なのか?)
 この問いについて、妹尾先生は、教員の長時間労働は様々な理由により受け入れられてしまう現状があるので、長時間労働にどのようなマイナスの面があるのかをはっきりする必要があることを指摘します。

 長時間労働の影響については、例えば、バーンアウトや過労死などの影響があること、そして個人については、自己研鑽の時間が減ること、仕事の能率が下がることなどの影響があることが挙げられました。職場環境については、長時間労働を価値とする風土が形成されると、長時間労働を厭わない教員だけしか働けない職場になったり、個々のワークライフバランスに支障をきたしたりするなどの影響があることが指摘されました。さらにこのようなことが積み重なると教員の仕事が不人気になるなどの影響も出ることについても言及されました。

 妹尾先生は、教師の意識改革が必要と言われるけれど、意識改革する必要を宣伝するだけでなく、現場で長時間労働を話し合ったり、忙しさについての認識を上げていくなど、本質的な取り組みをすることが大切ではないか、とお話しされました。また、個々の教師が、働き方改革、あるいは長時間労働の削減とは何か、といったことについて意味付け・価値付けをしていくことが大事であるとの指摘もありました。

3. 長時間労働を改善するためには、何が真に必要なのか?
この問いについて、妹尾先生からは、批判的な観点として、「1. 現状を正確に把握できているか」「2.問題の原因や背景についてきちんと検討できているか」「3. 教育という営みの微妙さや副作用の可能性について留意できているか」といった3つの問題提起がありました。

 たまたま目についた気になる部分だけに取り組むのではなく、忙しさの中身を分析するなど、問題を正しく捉え直した上で、長時間労働の改善に取り組むこと、授業の質を上げながら労働時間の削減に取り組むことなどが挙げられました。

 本セミナーでの妹尾先生の指摘は、一貫して、長時間労働を批判的に見ることで、長時間労働の問題の本質に迫ろうとするものでした。例えば、長時間労働のデータを批判的に見ること、また、形だけ長時間労働を改善する努力をするのでなく、忙しさの中身を把握し、それに向けて個々の意識を高めることで学校の風土を変えていくことなどが挙げられていました。セミナー当日は多くの教職員の方が参加しており、長時間労働の問題に関して、現場の課題や管理職としての意識が共有され、大変有意義な時間となりました。

妹尾先生、ありがとうございました。

(博士課程後期1年 小田理代)

窪俊一代表によるプログラムの紹介 堀田龍也教授による講師の紹介 学校マネジメントコンサルタント 妹尾昌俊先生による講演「学校の働き方改革の背景と必要な課題設定力」 グループディスカッションの様子