日本人学生対象

経験者の声

Information

氏名 Name 吉田智洋 Tomohiro Yoshida
学年 Grade 工学研究科博士2年 ECEI D2
指導教員 Supervisor 尾辻泰一 Taiichi Otsuji
留学期間 Stay 平成25年9月29日-11月29日 Sep. 27th-Oct. 30th, 2013
受入先 Destination Massachusetts Institute of Technology

1. はじめに

私は情報スキルアッププログラムの一環でH25/9/29から2ヶ月間、マサチューセッツ工科大学(MIT)へ留学させていただきました。留学までの諸手続きや海外での生活について雑多ではありますが、書かせていただきます。

2. 留学まで(国内での諸手続き)

本留学は指導教授からの勧めが切っ掛けでした。突然のことであり、不安でもありましたが、受け入れ先教員が指導教授と旧知の仲であったこと、MITのグループで行っている研究に対して非常に興味があったため、留学することに決めました。

受け入れ先教員とは基本的にメールでのやりとりとなりますが、留学期間、留学中の研究内容を決める必要があります。今回の留学に関しては、教員同士が旧知であったため、受け入れの可否、研究内容はおおよそ先生同士で決めていただきまして、日程だけの調節となりました。日程に関しては話し合いの結果、最終的に上記日程となりました。

日程を決めてからは、本プログラム(情報スキルアッププログラム)の申請書の作成やビザの取得、MITの留学手続きなど諸手続きがありました。これらのうち、ビザの取得は非常に煩雑かつ時間がかかったため一ヶ月以上余裕を持って手続きを進めることをおすすめします。

今回留学する上で、一番困ったのが宿舎の選定です。2ヶ月という長丁場のため、ホテル等は高額であり利用できません。そこで、私が利用したのが、MIT Housingという、MITの学生や研究員向けの宿舎の斡旋用のウェブサイトです。ここでは学生同士 の部屋の貸し借りなど、役立つ情報がMIT IDを使うことで利用できます。オンキャンパスのドミトリーが良かったのですが、ドミトリー自体の数が少ないこと、正規の学生しか利用できないということで選択肢から外れました。最終的に今回はホームステイを選択しました。理由としては、月750ドルとB&Bなど他の物件と比較して滞在費が安いことでした。今回は上記サイトに掲載されていた斡旋業者に依頼をしました。部屋は個室で机、ベッド、収納など必要なものは全て揃っており、お勝手も使えるため自炊も可能でした。家賃に反して非常に良い物件だったのですが、唯一の難点が、路面電車と徒歩でおよそ一時間弱ほどと大学から遠いことでした。ですので、交通アクセスや大学からの距離なども勘案すると良いと思います。もし可能ならば、受け入れ先研究室の学生に宿について相談することをおすすめします。

3. ボストンでの私生活について

ボストンは米国のニューイングランド地方にあるマサチューセッツ州の州都です。地下鉄と路面電車、バスなど公共交通機関は充実していますが、時刻表はなくおおよそ数十分程度の間隔で走っています。また、私の滞在中は11月に0度ほどまで冷え込みましたが、厳冬期には-10度ほどまで下がるそうです。物価は日本と比較して高く、外食ですと夕飯では10ドル前後でした。そのため、スーパーなどで買いだめをするなど、工夫が必要でした。

2ヶ月の滞在中、週末はほぼ観光に出かけました。具体的には、ボストン周辺はもとより、ナイアガラの滝やニューヨークへの旅行、ボストン日本人会が主催したニューハンプシャーへの紅葉ツアーなどに出かけました。さらに、本期間中には、コロンブスの日やレッドソックスの優勝など多くのイベントが有り、感謝祭ではホストマザーや他のホームステイメンバーと共にパーティを開きました。これは、各人が料理を持ち寄るポットラックパーティ形式で、私も料理を一品作り持って行きました。米国ではこの形式のパーティが一般的らしく、教授の家で開かれた、ホームパティも同様の形式でした。

4. 留学中の研究内容等

本留学では、「High-frequency characterization of InGaAs MOSFETs」と題して研究を行いました。本項では留学中の実験や諸手続きについて時系列を追って記載します。

まず、到着後1週間は留学生課に提出する書類の記載や、実験室の鍵の申請などの諸手続きで終わることとなりました。この期間はボストンに慣れ、研究室のメンバーと親交を深めるために有用な期間だったと思います。ひと通り手続きが終わったあとは、自身が使用する系の確認を行いました。そこで、今回私が使用することになっていた高周波の測定系が立ち上がっていないことが分かりました。そこから、実験系の立ち上げ、確認作業を行ったのちにデバイス測定に移りました。

測定したデバイスは、本年度のIEDMでMITのグループが発表したInGaAs-MOSFETでした。いくつかの試作ウェハ上のデバイスについて、まず、DC測定でトランジスタ動作とその性能を確認し、高周波測定するデバイスをいくつかリストアップしました。高周波測定は先に立ち上げたネットワークアナライザ(VNA)を用い、デバイスのSパラメータ測定を行い、この結果から、ゲート・ソース間容量や電流利得遮断周波数(fT)などの高周波パラメータを導出しました。この方法自体は日本で行っていた手法と同様であり、日本での経験が非常に役立ちました。今回測定したデバイスでは、寄生容量を低減するための設計をしたものとそうでないものの2種類のデバイスがあり、その設計による影響は高周波特性に現れることになります。これらの違いについて滞在中は測定により確認しました。

滞在も2週間を過ぎると測定した結果についてミーティングで報告しその結果の妥当性について議論するという一週間の流れができ、比較的スムーズに実験を進めることが出来ました。そのため、2ヶ月めはあっという間に過ぎて行きました。2ヶ月という期間は少々短かったため、いくつか残った実験に関しては一緒に実験を行った学生に引き継ぎ帰国することとなりました。MIT側では滞在延長も可能とのことでしたが、滞在延長を想定していなかったため帰国することとなりました。もし、短期滞在する場合は滞在延長の可否なども指導教員や国際交流推進室などと相談しておくと良いかもしれません。

今回の滞在中の結果については、共著という形で将来的に論文にまとめる予定です。今後も研究交流など、今以上に親交が深まることを期待しています。

5. おわりに

今回の滞在では、研究の基礎能力と英語力の向上が図られました。単語を忘れた時、一度で伝わらない時でも、絵を描く、ゆっくり言い直すなど、伝えようという意志さえあれば最終的にはコミュニケーションを取ることは可能です。特に重要な事は、英語を話すことに対して気後れしないことだと思います。最後になりましたが、本文章が留学を考えている、もしくは決まった皆様の一助になれば幸いです。

6. 謝辞

今回の研究滞在はとても有意義かつ楽しい物でした。受け入れてくださったdel Alamo先生、ともに研究をした研究室のメンバーに深く感謝いたします。また、研究滞在の機会を下さった、尾辻先生、末光先生に深く感謝いたします。今回の滞在に関して、多大なサポートをしてくださった森山先生に深く感謝いたします。このような貴重な機会をいただけたことを、関係する皆様に深く感謝いたします。

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